第109回:家探し
あっという間に6月になった。入社まであと1ヶ月だ。
ここ数日、新居を探している。4月頃からサイトで調べたりして、いくつか目星はつけていたのだが、当然良い物件は次々と埋まってしまった。特に、東京は物件の出入りが激しい。「あんまり早くから探しても意味ないなー」と諦めてしまった僕は、5月下旬まではむしろ新居のことはあまり考えず、旅行などに専念していた。そしてここに来て、ようやく本気で家探しを再開。いくつかの不動産屋と「メル友」になり、毎日のようにやりとりしている。
大学四年間は、SFCの最寄り駅である湘南台で一人暮らしをしていた。築年数がわりと古めな、1Kタイプの安いお部屋。でも駅から徒歩2分だし、すぐ目の前にはダイエーがあるし、部屋自体も一人で住むには十分な広さだった。湘南台はたしかに田舎だけど、駅前は結構お店もたくさんあって、生活に不便はない。いま振り返ってみても、「いい暮らし」だったなあと思う。
しかし、そんな湘南台のマイホームにも、いくつかの難点はあった。ひとつは、都心から遠いこと。他大学の友人や社会人の先輩方と飲むときは、もちろん都内に出掛けるのだが、一番アクセスのいい(乗り換えなしで行ける)新宿でも、片道約1時間かかる。個人的に、1時間で行けるならまだ許容範囲だ。問題は、終電が早いこと。23時半頃には、湘南台まで辿り着くすべがなくなってしまう。「二次会いこうぜ」なんて言ってうっかりしていると、朝まで三次会コースが確定する。これは、少々きつかった。
もうひとつは、バス・トイレが一緒だったこと。「男だし、どうせシャワーで済ますからいいや」と思って妥協したのだが、やっぱり湯船に浸かりたくなることが多かった。体育会の練習で疲れた日や、冬の寒い日は特に。どうしてもガマンできなくなって、バイクで銭湯まで通っていた時期もあったけど、湯冷めするし時間かかるしで、面倒だ。僕は性格的にも温泉が大好きなので、そこは譲るべきじゃなかったなあと思う。
そんな経験を4年間みっちり積んできたので、今度住む新居は、「終電の心配がなく(=交通の便がよく)」「お風呂がきれいで広い」ところがいい。コンサルタントという仕事柄、「忙しくてあまり家にはいない」とよく言われるけど、忙しいからこそ、帰りたくなるような居心地のいい家に住みたい。…なんて、贅沢なことを考えつつも、言ってしまえば家探しもひとつの「ご縁」なので、きっと収まるところに収まるのだろう。誰かが言ったように、恋愛と一緒。「タイミング・フィーリング・ハプニング」なのだと思う。
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅