第110回:民間人の視点

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「世界青年の船」事業の視察でも訪れた和田中学校の元校長・藤原和博氏に関する記事を読んだ。(リクルート出身の校長ということで一時期話題になったので、知っている人も多いかも)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32726

「若者の雇用対策」という、いまの日本が直面する重要な問題に対しても、結局は厚労省・文科省などの利益を優先した解決策しか上がって来ない。ハローワーク職員を全国の大学に派遣するのも、言ってみれば厚労省の事業拡大だし、事業仕分けで廃止された事業をここぞとばかりに復活させるのも、文科省の狙い通りだ。若者支援に名を借りた焼け太りという表現も、決して言い過ぎではない。
藤原氏は、委員会に対して提出した文書「離脱申告とその理由」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koyoutaiwa/wakamono/dai5/siryou04.pdf )の中で、 戦略と呼ぶべき対案を示していた。(”対案がない批判はすべきでない”という主張も、個人的にはすごく同感。)この藤原氏の示した対案が、現時点では日本の若者雇用問題に対するベストな戦略のひとつだと思う。

(1)“長期的には、義務教育を含めた日本の人材育成ポリシーを「処理的な仕事をする労働者の大量輩出」ではなく、「高度な付加価値を生むグローバル型人材」と「日本的な仕事を通じて社会貢献するローカル型人材(公務員やNPO等準公務含む)」として、全体を覆う「正解主義」教育を緩め(小学校で9割、中学校で7~8割、高校で5~7割、大学で5割程度に押さえ)、余剰分の時間を「複眼思考/クリティカルシンキング」で多様な人生を歩める技術を獲得する方向に切り替える。”

(2)“中期的には、国が予算を補助金によって配分するスタイルではなく、ローカルで独自に動けるよう、地方に財源を移行する。会社で働くハードルが高いニートなどは学
校支援地域本部で有償ボランティアとして吸収し、慣れるまでじっくり待つ。”

(3)“短期的には、高校や専各/大学中退者の受け皿が急務なので、自衛隊付属の「災害救助予備隊」で雇用しながら自活体験を積み、社会参画の可能性を探る。”

グローバル型人材はたしかにこれからの日本にとって必要だし、自分の身のまわりには「海外との関わりを強く持ちたい」と考える同世代が多いけど、一方でローカル型人材も必要。どちらか一方だけでいいなんてことは、絶対にない。

こういう民間人の視点や感覚によって打開できる状況はたくさんあると思うのに、それがすんなりとは受け入れられないのが、政治や官僚の世界。それって、どうなのかな。たまにはこんな真面目ぶったことも、考えてみた。

更新:2012-06-12
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅