第311回:チャリトレ

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あるよく晴れた午後、パーク柔道部の先輩二人にチャリ(自転車)トレーニングに誘われた。それに対して僕は思わず「マジですか?」と聞いてしまった。その先輩たちが“自転車”を一つの趣味にしていて、普段は乗らないようなもの凄く良いロードバイクと装備を持っていることを知っていたからだ。僕も自転車は好きだけど、当然そんなに本気で向き合ったことはなく、普段そこらで乗る用のそこそこなマウンテンバイクを持っているだけ。先輩たちのペースに付いて行く自信がなかったのだ。それで、やんわり断ろうとしたが、先輩の情熱と「ペースは合わせるから」という言葉に負けて、ご一緒させてもらうことにした。

しかし、いざ駐輪所で集合してみると、案の定先輩たちの装備の凄さに笑ってしまった。自転車のレベルの違いは置いておくとして、二人とも競輪選手のような全身ウェアにヘルメットとサングラス、専用の水筒まで持参している。一方僕は普通のトレーニングTシャツに短パンである。当然ヘルメットもサングラスもない。あまりの温度差に、一緒に走っていても、傍からは一緒のチームには見えなかったことだろう。

 

武蔵小山駅近くの柔道部寮を出発し、まず国道一号線を南に下った。平日の午後、車の通行量もあって、それほどスピードを出せるものでもない。それでも僕は、慣れないスピードでのハンドル操作を誤り、一度盛大にこけた。車道と歩道の数センチの段差が超えられなかったのだ。膝こぞうを擦りむいて大袈裟に血も出た。自転車で転ぶなんて何年いつぶりだろう。痛みや恥ずかしさよりも、何となく懐かしい気持ちになった。

国道一号線を多摩川まで下り、今度はその河川敷を上流に向かって走った。ここは自転車道として整備されているので走り易く気持ちが良い。この季節特有のちょうどいい太陽を浴びながら、川と草の香り漂うコースを全速力で駆け抜けた。中原街道で河川敷を降り、北上、寮に帰った。

今回はだいたい平均時速20~30㎞で15㎞ほど自転車を漕いだようだ。

 

この自転車の旅、いちおうトレーニングという言い方をするが、僕らにとっては気分転換のための軽い運動である。普段のランニングやウエイトトレーニングなどと比べると負荷はだいぶ軽い。練習がキツくて集中が切れそうな時、ちょっと身体を動かしておきたい時に最適なメニューである。

次は転ばないように気を付けて、また行きたいものである。

第311回:チャリトレ