第316回:天理合宿①

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7月4~9日の日程で天理大学に行った。パーク24柔道部の合宿である。他のパーク柔道部員たちは、合宿も含め何回も訪れたことのある天理大学だが、ちょうど大学院のテスト期間と重なって去年の合宿に参加することができなかった僕は今回が初訪問である。だから、天理ならではの“文化”というか“伝統”というか、独特な環境・習慣一つ一つが僕にとっては新鮮で面白かった。

 

天理の道場には全部で6試合場ある。入口から見て横2×奥3という具合だ。そこに敷かれている畳は3種類。一番奥の2試合場は最新の畳。いつも我々が踏みしめている柔らかいやつだ。真ん中の2試合場はひと昔古い作りの畳。いちおう表面はビニールのような素材で覆われているけれど、中身が固くて角ばったやつだ。そして一番手前の2試合場ははるか昔、太古の畳だ。いわゆる“い草”が丸出しの状態。およそ10㎝間隔で編み込んだ太い糸が、まるでホチキスで留めたように見えるやつだ。想像がつくだろうが、固さは板とほぼ変わらない。また、草丸出し故に滑りやすい。

この太古の2試合場には、毎回練習前に、学生がじょうろで水を撒く。本当かどうか知らないが、濡らすと滑りにくくなるという話だ。それにしても道場に水を撒くなんて、僕の長い柔道人生でも初めて観る光景だ。いつもビッショリと足汗をかいている僕にとっては、撒いても撒かなくても別にどっちでもいい光景でもあった。

 

そのような畳を今でも使っている理由を学生に尋ねると「伝統だから」という答えが返ってきた。予想していた「予算の関係上」等ではないらしい。なんでも、いまどき新しい柔らかい畳の方が安いのに、敢えて古いタイプのものを注文しているんだとか。“伝統”というもの自体他人にはなかなか理解し難いものだが、僕にとって天理のこれは甚だ不思議なものだった。一週間、普段とは違う足裏の感覚の中、とにかく怪我だけはしないように気をつけて練習した。