第363回:北陸旅行(白川郷)
旅の最後の夜は、白川郷で過ごした。村の一番奥の方にある合掌造りの民宿に泊まったのだ。よく見る合掌造りの写真から、小さくて可愛らしい三角の家というイメージを持っていたが、実際に観てみると、大きくて立派でビックリした。
僕らが泊まった夜、ちょうどどこかのテレビ局が取材に来ていて、夕食の様子を撮影させて下さいと申し出てきた。あまり気乗りしなかったけど、こんなところで断るのも可哀想なので仕方なくOKした。途中「白川郷に来てみて、村や合掌造りを見て、どうですか?」的な質問をされた。大して知識もないくせに、「この古くからの文化を体験し、伝統を守っていく重要性を再認識した」というような、それっぽい、まるで政治家が言いそうなコメントをした。自分がテレビの視聴者だったら「なんだコイツ、中身ないくせに偉そうだな」と鼻で笑う類の台詞だ。
旅行中、この白川郷での一泊だけが雨だった。それも悪くない。合掌造りの屋根の下で、普通の屋根とは違った雨の音を聞きながら寝るなんて、なかなかオシャレだなと思っていた。が、実際には雨に喜ぶカエルの大合唱で雨音なんてほとんど聞こえない夜であった。合唱の中には、実家で聞きなれたモリアオガエルの声色もあったように思われる。
次の日朝7時からの朝食を済ませてから、散歩に出かけた。民宿の奥には山があって、手前には川が流れている。山の手前の斜面が少し拓かれていて10段くらいの段々水田があって、水田には山ほどのイモリやオタマジャクシやカエルがいた。たまにそれを狙った蛇もいた。嫌いな人もいるだろうけど、とても可愛い奴らだ。あまり人に慣れてないようで、大して逃げないイモリたちは簡単に捕まえることが出来た。彼らはいきなり水から引き揚げられて少しふて腐れているように見えた。
子供の頃、僕の実家のあたりにはイモリなんてふつうにいたけど、最近はどうなんだろう。田んぼの横に流れている水路でザリガニやら何やらを捕まえまくった幼い記憶が蘇ってきた。やっぱりこういう自然の遊び、生き物との触れ合いって幾つになっても楽しいもの。「文化を守っていくことも大事だけど、やっぱり自然を守っていくのってもっと大事だな」と前日の自分のコメントを心の中で補足しておいた。