第385回:今年のランチで後悔していること②
結局一日で、とりあえず今にも吐きそうという気持ちの悪さがなくなったから、次の日から会社には行ったものの、なかなかまともな食事が摂れず、2~3日はお粥生活をした。寮の目の前のセブンイレブンから、数日間、味の素の「卵がゆ」が消えた。練習は結局一日しか休まなかったから、体重が3kgくらい落ちた。
それ以来、僕の食生活は少し変わった。週に2度くらい食べていたラーメンは2週間に1度程度になり、大好きな麻婆豆腐もそれ以来ほとんど食べていない。少しでも胃に違和感があれば、すぐにサラダ生活に切り替えるようになった。今まで僕の暴飲暴食に、一度も文句を言わず黙々と付き合ってきてくれた胃も、もう限界だったのだろう。つまるところ、もう若くないってことなのかもしれない。少しずつ、一つずつ、良くも悪くも大人になっていくのだ。
有楽町でのインタビューは、質問の後に「その後悔を五・七・五の俳句にして書いて下さい」と色紙を差し出してきた。僕は、喋るのはそこそこ得意だが、文字を書くのはメッキリ苦手だ。苦手と言うより、極下手だ。左利きだからと言い訳はするが、とにかく人に見せられる代物ではない。結婚式の記帳ですら、出来れば後輩に書かせているのに、全国ネットに晒されたらもうお嫁には行けなくなる。という訳で、字だけは勘弁してください、とカメラの前からそそくさと逃げてきた。インタビュアーとしては、時間だけ取られて、放送には使えない面倒臭いサラリーマンだったかもしれない。けどこれだけは譲れない。
有楽町の駅前では、ちょくちょくそういう撮影隊を見かける。けどこの出来事以来、僕はそういう部隊を見つけると、少し距離を取って、得意の話しかけるなオーラを全力で出して通り過ぎるようになった。これもまた、一つ失敗から学び、大人になった、ということだ。