第437回:熱海②

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翌日は7時に目が覚めた。サラリーマンが身体に染み付いてきてやがる。たらふく朝飯を食い風呂に入り、チェックアウト。相方が「時間があれば行ってみたい」と言っていた“起雲閣”とやらに行ってみた。時間なんて、あるに決まっているのだ。

起雲閣とは大正中期に大金持ちが建てた別荘で、時代特有の和風と西洋風が入り乱れた大きな建物だ。終戦後は旅館として活用され、谷崎潤一郎・志賀直哉・太宰治などの文豪に愛されたらしい。流石に僕でも知っている文豪たちだが、教養と歴史的興味の乏しい僕には、羽生善治が竜王戦を戦ったという部屋に一番感動した。

近くにある梅園はあまりに人が多かったので散策を諦め、沼津の方で美味い魚を食べることにした。

 

沼津港近くに数店舗展開している「魚河岸 丸天」の、熱海側から一番近い「御団地店」を目指した。熱海⇒沼津だから伊豆半島の付け根を横断したわけだが、所要時間は車で30分ほど。キレイに富士山が見える山道を軽くドライブすると着く。店は実に目立たないところにあった。通りから見えるような看板もなく、ネット情報がなければ間違いなく素通りしてしまうような店だ。

 

僕らが着いたのは、12時ちょい過ぎだったから、きっと並ぶんだろうなぁと心配したが杞憂だった。駐車場も、思ったより広い店内も3分の1程度しか埋まっていない。きっと平日に、ここらへんで働いている人がランチや飲み会で使っているのだろう。地元感が強くて、穴場を見つけたような優越感が味わえる、観光客としては嬉しく楽しい店だ。予め狙いを付けておいた「金目鯛の煮付け」と「海鮮丼」を食べた。これが感動するほど美味しかった。食べたものだいたい美味いと思う僕だが、たまに感動レベルで美味いと思うものがある。胡散臭い食レポなんてしないけど、周りに勧めたくなる&また行きたいと思う美味さであった。

 

18時帰京。今回の旅は美味い飯が一番の思い出だ。次はどこに行こうか。蔦屋書店の旅行誌コーナーでもブラつきながら、また考えるとしよう。