第463回:母校へ

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先日、何年ぶりかも分からないほど久しぶりに出身中学、桐朋に行った。僕よりも少し年上、在学期間もかぶらない柔道部のOBの方に誘ってもらって、練習に参加してきたのだ。

 

国立駅からのノコノコ歩いて行った訳だが、駅やロータリーが新しくなって当時の面影はなく、だいぶ面食らった。一瞬、どっち側の出口だったか迷ったほどだ。周囲の人に多大なる迷惑を掛けながら友達と鬼ごっこができるような非効率的で迷路みたいな国立駅はもう無かった。

駅から学校までの通学路は比較的当時のままで少しホッとした。お菓子やジュースがメチャクチャ安いドラッグストアや、必要のない道具を買いあさっては怒られた文房具屋がそのまま残っていた。今なら分かる、優秀な一橋大学も。駅からの距離を100mごとに教えてくれる歩道のタイルもまだちゃんとあった。800m過ぎくらいで右に曲がれば桐朋だ。今考えれば、毎朝毎夕よく歩いたな、と思ってしまう距離だ。

肝心の学校は、国立駅とさえ比べ物にならないくらい変わっていた。当時の校舎が何一つ残っていないという変わりっぷり。建物の位置や構造が変わっているものだから、柔道場が入っている体育館まで行くのに、本当に迷子になった。昔は校舎の建物の間を抜けて一直線に行けたのに、今では立派な校舎が構内を完全に縦断していて、校舎の中を通り抜けるか、グルリと建物を避けて行かなくてはならない。しかも校舎内は上履き仕様(当時は校舎は靴のまま入った)。迷った挙句、やれやれと思いながらサンダルを脱いで裸足で校舎をペタペタ歩いて抜けて体育館に向かった。いかにも男子校生らしくオドオドした生徒たちの、変な奴がいるから近づかないようにしようという目に見送られた。

体育館だけは昔のままの位置に改築もされずに残っていた。どの施設を優先的に新しくするか、というのはその学校が何に力を入れているか、と比例するのかな。僕の出身中学と出身高校は全くもって正反対、ということになる。

 

柔道部の練習は昔から特に変わらず、平和なもの。意外と部員が多くてホッとした。僕の頃は数人しかいなくて、何年か経ったら廃部になるんじゃないかと思っていたものだ。

中高一貫の進学校に受験してまで入れてもらったくせに中学3年間だけ在学して、柔道に明け暮れた僕のことを、現役の子たちはどう見たのか。彼らの表情からは読み取れなかったし想像もできなかった。良くて「よく分からないけれど、柔道頑張ってた変なヤツ」、悪くて「変なヤツ」といったところだろう。なんとなく凄く遠いところに来てしまったような気がした。

 

今さら大したことは出来ないけれど、またこれも一つの恩返しだと、恩着せがましい自己満足をして、変わり果てた国立駅から柔道頑張ってる変なヤツがたくさんいるいつもの街に帰った。