第500回:永沢さん

Pocket

突然だが、僕は”ノルウェイの森”の”永沢さん”なる人物が好きだ。

ノルウェイの森とは、言わずと知れた村上春樹の代表的な長編小説だが、最近時間を持て余している僕はそれを読み返して、改めて思ったわけだ。村上春樹の小説に出てくる男の中で、やっぱり永沢さんが一番カッコいいな、と。

永沢さんは、主人公”ワタナベくん”と同じ寮に住んでいる、学年が少し上の東大生で、家柄も良く、本人もとにかく優秀、明記はされていないけれどおそらく滅茶苦茶イケメンな男である。とんでもなく美人というわけではないけれど人間的な魅力溢れる彼女がいて、結局余裕で外務省に入ってバリバリ働く人生を送っていく。これだけだと、まぁ確かにカッコいいけど・・・という程度なんだけど、僕が好きなのは、見えないところでしっかり努力していること、自分の能力を惜しみなく発揮してかなりクズなことも平気な顔をしてやるところ。もちろんクズみたいなところは決して真似しちゃいけないんだけど、この人みたいになれたらなぁと思ってしまう。

僕から見たら永沢さんの言うこと為すこと、全部がカッコよく見えてしまうのだけれど、なかでも一番好きなセリフは「あれは努力じゃなくてただの労働だ。俺の言う努力というのはそういうのじゃない。努力というのはもっと主体的に目的的になされるもののことだ」ってやつ。永沢さんが、世間の人間が”努力”しないくせに不平ばかり言うことを非難し、ワタナベくんがみんなあくせく身を粉にして働いているよ?と窘めたのに応えたセリフだ。

社会人になって、こんな僕でもいわゆる”労働”をするようになって、つくづくそうだよなぁと思う。というより、そう考えて生きていかなきゃなと思う。仕事で一生懸命頑張るのは当たり前で、その中でスキルアップしていくのも当たり前で、問題はそれに加えて主体的、目的的”努力”ができるか?ということなのだ。僕には永沢さんのような才能がない分、永沢さんの10倍くらい努力しないといけないから、ワタナベくんみたいに「やれやれ」と言って、永沢さんと自分は違うと割り切ってしまいたい気持ちになることもある。でもなあ、割り切るのはもっと後でもできる。まだ“努力”はできるはず。引き続きコツコツ頑張ろう。