第502回:営業とは

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僕は“営業”と言われる仕事をしたことがない。しかし一人暮らしを始めてからは、たまに訪問販売という営業を受けるようになった。自分で営業をしたことがないのだから、そのテクニックやら手順やらは何一つ知らないのだけれど、どうもウーンと首をかしげてしまうような営業ばかり受ける。

先日夜7時頃、僕がちょうどギターの練習をしている時に、一件の訪問を受けた。ピンポンに答えてドアを開けると、いかにもなスーツ姿のお兄さんが立っていて「夜分にすみません。なにかバンドとかやられているんですか?」とお愛想を言われた後、「最近この付近で新しいアンテナができたことを知っていますか?」的な質問をされた。もちろん僕が知っている訳もなく、そう答えると「今お宅でWi-Fiって通されていますか?」につながって、使っていると答えると「その機械はこの写真の中にありますか?」と聞かれ、適当な返事をすると「どこのキャリアを使っているか?」「月々いくら払っているか?」などと質問が続く。その時の僕は全くもって暇だったし、彼も仕事なのだから、と可能な限り誠意ある対応を心がけていたものの、だんだんイライラしてきた。何がイライラするかって、その彼が一向に、何の目的で、何の提案に来たのか、を言わないのだ。合間合間にさりげなく「つまり、今日はどういったご用件で?」的な質問をしてみても、また遠回りな質問で返される。イライラ。

結局5分程度そんな問答を続け、一向に進まない商談に、ついに僕の方から「つまり僕の家のWi-Fiについて、機械だかキャリアだかデータプランだかを乗り換えたらお得になる可能性がある、という提案に来られたんですね」と彼の言わんとしていることを推察してまとめてみると「はい」と返ってきた。「でしたら今のところ大丈夫です」とドアを閉めた。一瞬で終わる話だったし、何ゆえ僕の方が一生懸命相手の言いたいことを推測して要約しなきゃいけないんだよ、と嘆息した。こちとて仕事をしている人間なんだから、もっとビジネスライクに結論からビシッと言って欲しいと切に思った。

彼も仕事で、夜遅くにいろんな家を回って大変なのは分かるけれど、ね。