第516回:講道館杯 withコロナ②
今年の講道館杯は無観客での開催だから、応援には行けないなぁなどと思っていたのも束の間、今年は付き人として選手に同行することとなった。付き人とは、言葉の通り、出場する選手と行動を共にして、練習の相手になるのはもちろん、試合の順番の確認・ドリンクの準備などいろいろなサポートをする人間のこと。歌舞伎役者のお弟子さん、お相撲さんのおとうと弟子、というイメージだ。そういう雑用云々を頼みやすいという意味で、普通であれば出身大学の後輩などにお願いすることが多いのだが、なんせこの時代、「他の所属の選手を招集するのは如何なものか?」という指摘の元、可能な限り同チーム内で完結しよう、という話になった。とは言え、うちのチームはお陰様で現役所属選手の8-9割が講道館杯に出場し、出場選手は当然他の選手のサポートはできないから、付き人になれる人間の数が圧倒的に足りない。そこで、すでに引退している僕のような人間にお声がかかったというわけだ。
Beforeコロナでは、時々大学の練習に参加したりもしていたけれど、いよいよ流行が本格化してきた3月以降は一度も道着に袖を通していない。柔道を始めた7歳から考えて、7ヶ月も道着を着ないのは間違いなく初めてだ(1週間着なかったことさえあったかどうか)。そんな人間が果たして、講道館杯に出場する選手の練習相手が務まるのか一抹の不安はあるものの、名誉なこととして、頑張らなくては、と思っている。
僕が今回”付く”のは-73kg級に出場する清水選手。僕と同じ歳でまだ頑張っている、いよいよ少なくなってきた現役同期のうちの一人だ。6年半前に入社・入部した我々。色々な変化と成長と、ちょっとした退化を共にしながら時を経てきたわけだが、何よりも分かりやすく大きく変化したのは体重だ。入社当時、僕は+100kg級で120kg前後の体重、清水は-66kg級で普段は70kgくらいの体重、およそ50kgの差があった。それが今では、僕が90kgちょいくらい、彼は-73kg級で普段80kgくらい、10kgの差になってしまった。このお互いの成長曲線はなかなか面白い。折れ線グラフにしたいくらいだ。いつか逆転でもしたら、本当にグラフにしよう。
冗談はさておき、30歳を目前にした実業団柔道家は、一つ一つの大会が大きな試練だ。失敗したら否応なく引退が突きつけられる。僕の意見としては、現役にしがみつくことが100%良いことだとは思わないが、戦う以上はもちろん勝つことが全てであり、正義だ。彼が一つでも上に行けるよう全力でサポートさせて頂く所存である。