第517回:ご近所トラブル①

Pocket

最近、僕の住んでいるアパートの隣に家が建った。ぎりぎりBeforeコロナに工事が始まって、夏の終わりに完成した。新築一軒家で、1階部分は駐車スペースになっている3階建。ちゃんと挨拶をしたことはないけれど、何度かチラッと見かけた感じ、おそらく30歳台中盤~40歳くらいの夫婦とヨチヨチ歩き(ヨチヨチ歩きができるのがだいたい何歳くらいなのか、僕はよく分からない)の子供が住み始めた。

空き地だった頃は、ここ駐車場とかにしちゃえばいいのに、と思っていた。工事が始まった頃は、ちょうど僕が自転車を停めているところの壁になってくれて、雨でも自転車が濡れなくなるな、なんて思った。そして彼らが住み始めた当初は、僕と大して歳も離れていないのに、ちゃんと家庭を持って、目黒区の駅から数分のところに一軒家をドーンと建てちゃうんだから、大したものだなぁなんて思ったりもした。そんな呑気な感想を抱いたり感心したりしていたのもつかの間、

その歩くか歩かないかくらいのガキの泣き声によって、それまで比較的快適で平和だった僕の日常は呆気なく崩れ落ちることとなった。

ご存知の通り寝力の弱い僕の睡眠は、かなりデリケートだ。脆くて儚く、今にも散ってしまいそうな花びらであり、風前のともし火だ。そして、すぐ隣の家から聞こえてくる子供のギャンギャンの泣き声は、花びらを一枚残らず散り落とす春一番であり、無情に吹き荒れるハリケーンのようなものだ。つまり一溜まりもなく、一片の余地なく、圧倒的に、目が覚めてしまう。