第544回:走ることについて再び語る
「一足早い誕生日プレゼント」と、一冊の本をもらった。本を贈ってくるなんてお洒落じゃないか、と思いつつ、カバーの付けられた文庫本を開くと「走ることについて語るときに僕の語ること」だった。趣味がランニングの村上春樹が、それについて書いた本だ。
もしかしたらお気づきかもしれないが、僕は村上春樹の本で、読んでいないものはほとんど無い。若干退屈な旅行記とか、インタビュー集とかを除いて、ほぼ読んできたつもりだ。なのでこの、「走ることについて語るときに僕の語ること」も既読である。ブログを読み返すと、どうやら2010年の末頃に読んだらしい。今から10年以上前、大学生になりたての頃だ(第62回参照)。
にもかかわらず今回これをもらった時は嬉しかった。改めて読み返してみると、10年以上前の僕と、今の僕、日常の中で「走ること」の位置付けや重要度がガラリと変わっていることがよく見えて面白かった。
当時の僕は120kgの100超級柔道家で、強くなるために仕方なく走り、間違っても自分で好き好んで走ることはしない人間だった。走る距離だって一日せいぜい5~6km。毎回、二度と走りたくないと思いながら走っていた。それが今や、わざわざ早く起きて、誰に強制されるわけでもなく、もちろん今さら強くなるためでもなく、10km走っている。週に50km、1ヶ月で200kmちょい、黙々と走っている。本の中で村上氏が「週に60km走る」と言っていて、10年前は「こいつ頭おかしいな」と思ったのに。えらい変わりように自分でも笑ってしまう。
楽しいプレゼントをありがとう。