第545回:ヒゲ

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ここだけの話、最近ちょっとヒゲに興味がある。自分のヒゲを生やすこと、に興味がある。

なんで今さら?と聞かれると難しいのだが、心当たりがあるとすれば、今放送しているテレビドラマで竹野内豊がカッコよくヒゲを生やしているからか。もちろん、ヒゲがカッコいいのではなく、竹野内豊がカッコいいのだということは分かっている。自分がいくら綺麗にヒゲを生やしたところで竹野内豊になれないことは、いくら阿呆な僕にも分かる。それでもやっぱり男なら、特に厳つい系の顔や身体を持っている男なら、一度は生やしてみたいもの(と僕は思う)。もしかしたら、ヒゲによって今より多少マシな見てくれを手に入れられるかもしれない、と淡い希望を抱くのである。

とは言え、僕がヒゲを生やすにあたっては、非常に覆し難い壁がある。それは会社でヨシとされていないことだ。ペーペーの僕がそれに抗ってヒゲを蓄えるのはなかなか難しい。しかしここ1年半、時代はマスク必須である。誰かに顔の下半分を晒すことはほとんど無い。誰かに晒すことが無いのなら、そもそも生やす意味もないんじゃないの?というもっともな指摘はひとまず置いておくこととして、ここ一ヶ月くらい、数日こっそり生やしては「なんか違うな」と剃る、を繰り返している。どうも僕のヒゲは密度が足りない。ハゲ始めたおっさんの頭のよう、鎮火後の山火事現場のよう、まばらなのだ。

もうちょっとの間だけ試行錯誤を繰り返し、自分はヒゲ生やしてもイマイチだ、ということに気付くまで、温かい目で見守っていただけると幸いである。