第567回:四国旅⑥

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琴平は、もちろん金比羅宮に登った。麓から本宮まで800段弱、奥社まで1,400段近く、言わずと知れた階段地獄のお参りだ。仮にも元アスリートで、これまで数え切れないほどの階段トレーニングをしてきた僕は、階段を見ると思わず駆け上がりたくなる。普通の人に言うと「変態なの?」と距離を置かれるが、階段ダッシュをした時の、途中から乳酸が溜まってくる感覚、「もう動かないよ」と訴えかける脚にムチを打つ感覚が好きなのだ。とは言え今回は、さすがに一人で登るわけでもなく、トレーニング用の格好もしていないから、トボトボと相方のペースに合わせて登った。一度でいいから、ちゃんとした格好で最初から最後まで何分で登れるのか挑戦してみたいものだ。結局40-50分くらいかけて登って、頂上で寒くなるまで景色を眺めて、下山した。下り道で追い越した小太りのオバさん集団が、たまたま遠くから聞こえてきた救急車のサイレンの音に「あー良かった、ちゃんとお迎えが来てるわ」とハァハァしながら言っていた。思わず吹き出してしまった。

金比羅宮には、前回登った時にもお見かけしたイメージキャラクター(?)の”笑顔元気くん”のポスターやら旗やらが、未だに至る所にいらっしゃった。僕は美術芸術には全く興味もなく、それ故にその価値が分かる人間ではない。だから、世間的に「凄い」と言われている作品に対しては、全く嫌味なく「僕には分からないけど、凄いんだ」という気持ちで向き合っている。しかし、この”笑顔元気くん”に限ってはどうしても「これは凄いのか?」という感想を抱いてしまう。小学生が画用紙に、休み時間にイタズラ書きをして、しかも途中で授業が始まったから完成さえもしなかった顔、にしか見えない。あと50年くらい生きれば理解できるのだろうか、実に奥の深い世界だ。