第585回:初PCR

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3月の最後の週、僕は初めてPCR検査を受けた。なんだかんだこれまで濃厚接触者にもならずに生き延びてきたから、一度も受けたことのなかったPCR検査である。そんな僕が今回、とうとう検査を受けさせられたのは、決して怪しい状態になった訳ではなく4月の頭に福岡で開催される柔道大会に付き人として同行するためである。この大会は、出場選手のみならず付き人まで全員PCRを受けなくてはならない。なかなか厳しいルールである。

選手本人が”陽性”を出して出場停止を喰らうのは、かなり可哀想ではあるがある意味諦めがつくかもしれない。しかし僕のような部外者の付き人が”陽性”で選手に迷惑をかけるようなことは万が一にも、いかなる場合においても、絶対に許されることではない。だから検査前も、検査を受けてから結果が出るまでも、絶対に柔道部の誰とも濃厚接触しないように徹底した。

今回受けた検査は、プラスチック容器に必要量の唾液を入れて病院に送るというもの。鼻に綿棒を突っ込むタイプでなくて良かった。あれは脳みそまで届いてしまいそうだし、痛そうだ。柔道部の連中は、大会の度に検査を受けているもんだから、慣れた手つきでペペッと作業していた。僕はそんな彼らに手取り足取り教えてもらいながら唾を入れて、「どうか陽性が出ませんように」とお祈りをしてから厳重に梱包して担当者にお渡しした。

結果はその日の夜のうちに通知が来て、”陰性”、久しく味わったことのない安心だった。大会の同行者としていろいろなところに連れて行ってもらえるのは嬉しいが、この緊張感は勘弁してほしいとつくづく思った。