第591回:半世紀へのエントランス④

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久しぶりに聴く櫻井さんの歌は相変わらず信じられないほどお上手で、久しぶりに「自分には、どうやったって、逆立ちしたって、例え生まれ変わったって、そんな風には歌えない」という絶望的な才能を感じさせられる感覚を味わった。1曲1曲、歌い出すたびに鮫肌に近いほど鳥肌が立った。

30周年のライブだから、誰しも聞いたことのある豪華な有名曲をずらずらと歌ってくれるものだと予想していた。25周年の時もそうだったし。だから、Mr.Childrenにさほど詳しくない相方にも「おそらくこの辺を歌うと思う」と有名曲を中心に勉強もさせていた。しかし蓋を開けてみれば、次から次へと「へー、そんなの歌うんだー」という意外な=マイナーな曲を多く歌ってくれた。個人的なイメージでは、”みんなが好きな=有名な曲”ではなく”彼らが歌いたい曲”を多く歌ってくれた感じ。綺麗事ばかり並べ綴った曲ではなく、「こんな世の中やってられないよ」という皮肉っぽい曲が多かった。そしてその分櫻井さんも、カッコつけて歌うというより、楽しそうに歌っているように見えた。

僕としては、普段聞き慣れない歌を生で聴けるのが嬉しくて終始ニコニコ聞いていたものの、相方は割とポカーン状態が多かった。当然だ。勉強してきた曲がほとんど出てこず、全く知らない曲が次から次へと出てくるのだから。僕のテスト対策がことごとく外れたことについては、少しだけ「ごめんね」と思った。

歌は相変わらずお上手だがトークも相変わらずの腕前で、しかもツアーの初日だったからか、おそらく事前に考えてきた”話すこと”がスラスラと出てこずに、ぎこちなく見えた。面白かったのは、アンコール前最後の曲で”Gift”を歌ってくれた時。出だし「一番キレイな色ってなんだろう」が、次のフレーズ「一番光ってるものってなんだろう」と混ざって、櫻井さんが「一番ヒキレ・・・」と噛んでしまった。流石に曲の出だし過ぎたからか、すぐに「ごめん!もう一回やらせて!」と曲を止めて、歌い直してくれた。直前に「最後の曲です。大切に・・・大切に・・・皆さんに・・・お届けします。」的な勿体ぶったトークをしていたものだから、間違えた時はなんとも恥ずかしそうにしていて可愛かった。

そんなこんなで20時頃にライブは終わった。3時間弱、ずーっと一人で、最後までお上手に歌い通して、あっぱれであった。最後にグッズが買えるかなーと会場を出てから売り場を覗くと、やはり長蛇の列が出来ていた。グッズに対しては意思の弱い僕はアッサリと諦めて、ホテルのある中洲の街に帰った。

ライブ中に櫻井さんがチラッと言っていたけれど、今回のツアーは、各会でセットリストを変えるようだ。現に僕らの行った翌日のPayPayドーム公演でも全20数曲のうち5-6曲を入れ替えたらしい。こうなってくると、同じツアーの違う公演も行きたくなってくるのがファンの性である。あまり当選が期待はできないが6月の日産スタジアムのチケットを申し込んでおいた。明日、抽選結果が分かる。期待はしていないとは言え、やっぱり当たるといいなー。楽しみは続く。