第603回:夏②

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そうこうしている間に完全に日が沈んで、街灯も乏しい辺りは真っ暗になる。それからみんなで庭に出て花火をした。みんな僕の同世代だから25~35歳くらいの、言ってしまえばオジさん・オバさんに片足突っ込んだような連中だけど、久しぶりに花火とかをやるとやっぱり楽しいもので、子供みたいにワチャワチャしてしまう。柔道ばっかりやっていて、普通の高校生・大学生が当然やってきたことをしていない僕らにとって、遅れてきた青春という感じ。我ながら人生楽しんでるな〜と思った。

花火を終えてからはまた家の中で、今度は”人生ゲーム”をすることにした。空き家の押し入れに色んなボードゲームがしまってあって、その中から選抜されたのだ。人生ゲームをちゃんとやったのなんて、それこそ小学生ぶりくらいかもしれない。それも、そんなにたくさんやった記憶はない。僕の家族は、どちらかと言うと”モノポリー”派で、大人になってからは麻雀派である。他のメンバーもおそらく同じレベル感で、ルールブックを片手に一つ一つ確認しながらタドタドしいプレーになった。しかしこれがなかなか面白かった。7人もいると、自分の順番が回ってくるのが5分に一回くらいで少し暇になる。そんなもんだからみんながみんな、他人の人生にメチャクチャ口を出すことになる。「こっちのルートに進んだ方がいい」とか「この職業はやめた方がいい」とか。誰かに子供が生まれるとお祝儀を取られるもんだから、「もう産むな」と怒ったり。俺の人生なんだから好きに生きさせろよ、とみんながみんなに言いたかったはずだ。”仕返し”などという、他の誰かから大金を巻き上げることができる物騒なマスがあって、止まった奴はさっきの大乱闘スマッシュブラザーズの恨みを晴らしたり。現実でノンビリ生きてる奴は、やっぱりゲームの進みも遅くて、最後一人取り残されたり。久しぶりに仲のいい連中とやるには実に良いゲームだった。