第604回:夏③
人数も多かったし、みんなが他人の人生に口を出しまくっていたから、人生ゲームが終わる頃にはもう夜中の12時を回っていた。「そういえばお腹空いた」なとど言う連中に、BBQの余り肉とチンするご飯を食べさせてからリビングの家具をどかして布団を敷いた。もちろん女子もいたけれど、7人みんなまとめて雑魚寝だ。なんだか高校時代の合宿を思い出す。2人くらいイビキをかく奴がいたけれど、疲れと酔いで意外とすぐに眠った。
でもやっぱり寝力の弱い僕は、朝は7時くらいに目が覚めてしまった。イビキよりも、外からのセミの声がうるさかった。小学生の頃は、よくセミを捕まえたものだ。1時間も網を振れば、虫かごいっぱいになる、実に易い連中だ。蛍なんかは見られなくなったけれど、セミの数は昔も今も変わらないな、と思った。
同じく目が覚めた奴を一人連れてコンビニでコーヒーと朝ご飯的な菓子パンをコンビニに買いに行った。ジャングルの中、当然歩いていけるところにコンビニはないから車で。コンビニから戻ってくる頃には何人かモゾモゾ起き出していて、適当にコーヒーを飲んで菓子パンをつまんだ。
部屋を軽く片付けてから、河に降りた。家の下を流れる小川ではなくて、ちゃんとした河:多摩川本流に降りた。これも僕が青梅に住んでいた頃、毎日のようにお邪魔した河だ。多摩川というと、武蔵小杉や二子玉川の広くて穏やかな、そして少し汚い河を想像する人が多いと思うが、青梅を流れる多摩川はそれらのだいぶ上流である。川幅は狭く、その分流れが早い。足がつかないほど深いところもあるし、岩がゴツゴツ突き出しているところもある。毎年、溺れる人がいたりいなかったりする、少し危険なレベルの河である。水は、僕が子供の頃よりは幾分濁ってしまったような気もするが、都心のそれとは比べ物にならないくらい綺麗だ。