第612回:紅葉祭り③

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日が落ちるか落ちないかの時間に、ライトアップが始まった。紅葉のライトアップは、木に電球を縛り付けるイルミネーションと違って、下から大きな光で葉っぱを照らす趣向だ。少しオレンジがかったライトが葉の色をより染めて、曇天の下で見るよりもよりもだいぶ映えていた。

この時間になると人もだいぶ増えた。ベンチもだいたい埋まり、木々の間の遊歩道にも軽い渋滞が生まれた。犬を連れている人も多かった。至る所で、犬と紅葉の映え写真を撮りたい飼い主たちが、虚しい努力をしていた。映えスポットに犬を無理やり座らせて、飼い主は少し離れてから犬の名前を呼んで、犬が飼い主の方向を向いた瞬間にシャッターを切る。そういうことを求める飼い主の犬ってのは、だいたい阿呆で、まともに座りやしないし、飼い主が離れていくと付いて行こうとするし、名前を呼んでも見向きもしない奴が多い。側から見ていると、実に滑稽だ。分かっている、僕がひねくれているのだ。彼らはその努力を心の底から楽しんでいるし、きっと犬たちも幸せに違いない。でも、自分は絶対にそういうことをしない人間として生きて行こうと改めて誓った。

18時頃に山中湖を出て、神奈川の方へ南下した。三崎港までは下道で2.5時間程度かかる。直接目指しても朝の4時から始まる市場を狙うには早すぎる。途中、茅ヶ崎の”竜泉寺の湯”に寄った。炭酸泉が売りの大浴場・サウナ・岩盤浴・リクライニングチェアと大量の漫画を有す休憩スペースがある、いわゆる大型のスーパー銭湯だ。茅ヶ崎だから、昔東海大に練習に行った帰りに寄ったことが何度かある。ここで風呂入って漫画読んで夜ご飯を食べて、閉館の25時までダラダラした。漫画は”進撃の巨人”を読んだ。かなり人気作品だったから、昔中盤くらいまで読んで、なかなか面白く、完結したら一気にまとめ読みしてやろうと思っていた作品の一つだ。物語の序盤は、ただただ巨人が怖いお話で、中盤から裏の陰謀や「実は・・・」的な要素がたくさん出てきて、最後は「実は・・・」の延長で盛り上がって、危機があって解決した完結した。銭湯の休憩室でぼんやり読むには、後半少し話がややこしかった。そのせいで、個人的には昔読んだ中盤くらいが一番面白かった気がする。