第654回:別れ①

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この12月は、僕にとって大きな別れが二つあった。

一つは行きつけの飲み屋だ。場末とまでは言わないが、間違いなく世の中の中心には位置していないスナックで、カウンター6-7席、4人くらいのボックス席が二つの小さなお店だ。2010年くらいからやっていて、ベースはママが一人、プラス女の子が1-2人くらいいる。僕がこの店に初めて行ったのは多分9年くらい前、23歳の時。僕が今の会社の柔道部に入って少しした頃に先輩に連れて行ってもらったのが最初だ。それからことあるごとにその先輩と一緒に遊びに行った。血気盛んな仲間同士でバカみたいに吐くほど飲むこともあったし、少人数でしっぽり飲むこともあったし、純粋にカラオケ大会をすることもあった。誰かの歌に合わせて下手くそなギターも弾かせてもらった。本当に、聞くに耐えないような初心者だった頃から弾かせてもらっていたから、仲間たちはもちろん他のお客さんたちの耳には多大なる迷惑をかけてきた。そこから多少なりとも弾けるようになったのは、間違いなくこの店のおかげだ。ママはもちろん、入れ替わりの多いこういう店で比較的長く働いていた女の子とは親友になった。いろんな友達もできた。大半が下らないものだけど、僕にとっては本当に思い出がいっぱいの場所だ。

大学生の頃にお酒というものをほとんど飲まなかったから、居酒屋も含めて色んな酒飲み場に対する知識が全くなかった僕にとって、初めての”行きつけの飲み屋”だった。言ってしまえばお酒を飲むことを教わった場所だ。それまで酒を飲んでこなかった23歳がまさか最初にスナックに通うようになるとは全くもって予想もしなかったことではあるが、今振り返ればそれが良かったと心の底から思っている。少なくともそれくらいの男子がまずはハマるようなガールズバーやキャバクラあたりにハマるより100倍良かったと思っている。