第655回:別れ②

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あくまで個人的な考察だが「スナックは、店員さんと”会話”ができるのが良い」と僕は思っている。もちろんお店にも拠るし、店員や客のパーソナリティに拠るが、スナックは大体みんな対等でそこには会話が成り立つ。それこそガールズバーやキャバクラは、明確に男がお金を払って女性に相手をしてもらっていて、人間対人間の会話は成り立たない。男は、一生懸命口説いたり、愚痴を聞いてもらったり、勘違いした御託を並べて自分に酔い、女性はそれをただ「うんうん」と聞いている。「すごーい」とか「へー、知らなかったー」とかを適度に挟みながら、決して否定はしない。自分の意見を発しない。議論もしない。個人的にそれは会話とは言えないし、面白くない。繰り返しになるが、スナックはそうではない。ちゃんと人間と人間で接して、だからこそちゃんと仲良くなるし、ちゃんと喧嘩もする。それが面白い。もちろんガールズバーやキャバクラに行く人たちは、女性の意見を聞きたかったり議論したくて行くわけではないだろうから、単なるニーズの違いなのだが、僕にはスナックの方が合っている。

最終営業日の12月26日は、昔からのお客さんやら、働いていた女性らやらが代わる代わるやってきて、ママとお店を労った。僕はその先輩と他仲間数人と、やっと席に余裕ができた深夜にお邪魔して、最後の後片付けから閉店までその幕引きを見守った。全くの素人で、その苦労はほとんど理解できていないが、12年間も1つの店を、しかもお酒の入る接客店を切り盛りするのは大変だったに違いない。単純に僕の社会人生活よりも長い期間やってきたのだ。心の底から「お世話になりました」と「お疲れ様でした」を伝えておいた。