第656回:別れ③
12月もう一つの別れは、会社の上司だ。僕は、柔道部を引退して2018年4月からいわゆる普通のサラリーマンとして働き始めた。最初の上司は若干ウマが合わずに、僕もクソ生意気で、いつも喧嘩ばかりしていた。引退したてで体力も有り余っていたから何回かぶち投げてやろうかと思うくらい喧嘩していた。
ウチの会社は10月末で期が終わり色々と組織改変が起きる。その改変の一部として、2018年11月から僕はその今回別れた上司の下に就き、経営企画の中のIRがメイン業務になった。ウチの会社、10月で期が終わるということは、12月に本決算の発表があって、翌1月に株主総会が開催される。異動して初っ端に、IRとして一年で最も忙しい時期が来るわけだ。経営企画やらIRはもとより、そもそもまともに社会で働き出して半年の僕は、当然ながら右も左も上下も前後も、何にも分かっていないクソガキだった。
この頃の僕について、今でも新卒の子なんかが入ってくる時に慰め(?)として使うポンコツストーリーがある。11月初め、下っ端の僕は、上司やら役員らが投資家と面談するところに同席をしてメモ取りを命じられていた。そこでやたら飛び交っていた単語が「サンキュー」だった。発音としても文脈としても、間違いなくありがとうのサンキューではなく、語尾が上がるサンキュー(⤴︎)だった。「このサンキューは、調子良かった」とか「サンキュー明けはどうですか?」とか。「まさかとは思うけど産休?この人産休取ってたのかな?」と本気で思ったりしていた。他にももちろん知らない単語が山ほど飛び交うのだが、サンキューの出現頻度が一番高かった。Google先生に聞いても、特にIRぽい言葉としての回答は得られなかった。仕方ないからよく分からないままにメモに”サンキュー”とそのまま記した。
サンキューの正体はそれからしばらくして”ヨンキュー”が出てきたことで知ることになった。11月はウチの会社にとって第3四半期が終わったタイミングでのIR対応になる。第3四半期は英語で”3rd Quarter”、略してIR業界では3Q(サンキュー)という。第4四半期は4Q(ヨンキュー)、そういうことか!となったわけだ。