第764回:フルマラソン⑥

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30~35km、1km当たり5分30秒。最後の折り返しをして、再び仁淀川を越える。必死に足を回しているつもりでも、ペースは上がらない。頭の中は痛い・辛い・辞めたい、だけ。しかしこんなところで止まるわけにはいかない。何に対する意地か、誰に対する強がりか、もはや考える余裕もないけれど、とにかく前へ。ゆっくりでもいいから前へ進まないと。

35~40km、1km当たり6分34秒。38kmくらいで遂に歩きを挟んだ。痛みを訴え続けた脚は、もう攣るとかそういうレベルではなく、確実に肉離れという状態になっていた。膝が震えるとかでもなく、気を抜いたら関節が逆に曲がるんじゃないかと思うくらい足全体に力は入らなかった。まっすぐ綺麗に歩くこともままならない。ゴールの春野陸上競技場に続く道は田んぼ道で、両サイドに水路が流れていた。フラフラとそこに落ちてしまいそうで、心配になる。それくらいコントロールが効かない。ヤバいと思った。これはもうダメかもしれない。「明日がどうなってもいい」というレベルはとっくに越えていたけれど、「ゴールできたら、もう立てなくてもいい」くらいの覚悟が必要だった。もはや「あとちょっとだよ、頑張って」という沿道からの応援にも、「絶対お前走ったことないだろ・・・。このレベルのキツさ知らないだろ!」と怒りを覚えてしまった。なるほど、メロスはこんな状態だったのかもしれない。テレビで見る駅伝で、最後這いつくばりながら、膝から血を流してゴールに向かうランナーもきっとこれだ。「やったことがない」というのが好きじゃなくて、「フルマラソンっていうのも一度は走っておきたい」と比較的軽い気持ちで臨んだ今回。今まで「辛そうだなぁ」と眺めていたものが、どれだけ辛いのか分かった。やってみなければ絶対に分からなかったこの辛さこそが挑んだ価値なのだ。