第93回:講道館杯
昨日12日土曜日、千葉ポートアリーナで講道館杯全日本体重別選手権大会があった。僕にとって今回の講道館杯は、東京学生といい全日本学生といい、ギリギリのところで何とか次に繋げて、やっとたどり着いた大会だ。( ちなみに出場資格はナショナル・シニア強化、前年講道館杯ベスト8、全日本選手権ベスト8、全日本学生ベスト8、全日本ジュニアベスト4、全国警察ベスト4、全国実業団ベスト4、高校総体優勝、等々のべ50枠ほどだが、相当数ダブるので実際の出場者は各階級30人程度になる )。結果は3回戦敗退のベスト8、から敗者復活で5位。ベスト8入りで、来年の出場資格もゲットした。去年初めて出たこの大会も悪くなかったけど、今回は更に進歩した良い試合が出来たと自分の中では思っていたりする。もちろん、まだ続いていく柔道人生の中でこれは通過地点だし、これからもっともっと強くなっていく予定だ。でも現時点での自分の力はだいたい出せたんじゃないかな。こういう気持ちになれる大会は最近なかったから、正直少しだけ良い気分だ。これを自信にしてもっと練習して、更に上にいきたい。
今回の大会、技術的に、たくさんの出来たこと出来なかったことがあって、一日でかなりの経験値が乳酸と一緒に溜まったはず。でも一番デカかったのが、精神的に一つ大きくなったことだと思っている。そのキッカケとなったのが・・・
講道館杯は自分が今まで出た大会の中で一番レベルの高い大会だ。ほとんどの相手は年齢も体格も実績も経験も僕より上。だから極控えめに言って凄く怖いし緊張する。一回戦の前、僕はもうガチガチになって前の試合が終わるのを待機口で待っていた。並んで立っている自分と当たる選手と目が合うのが嫌で、別の階級の試合場をふと見た時のこと。たぶん30歳くらいでそろそろ引退を考えたこともあるだろう年齢の選手がなんと笑いながら試合をしていたのだ。僕は普段、高校や大学の試合で、笑いながら試合をしていたり、負けたのに笑っていたりする人は好きじゃない。でもその選手は照れ隠しでヘラヘラしてるふうではなくて、本当に楽しそうに笑っていのだ。こうして柔道をできることを心から楽しんでいるような笑い。衝撃的だった。柔道が楽しいって気持ちを思い出した瞬間だった。僕はいつの間にかそういう気持ちを忘れてしまって、負けることを恐れながら悲痛な気持ちで戦っていた。もちろんみんな、負ければ何も無い絶望が待ってるし、色んなものを犠牲にする恐ろしい世界で戦ってて、これからもまた挫折やら何やらいっぱいあるんだろうけど、その人を見て、それでもやっぱり柔道が好きって原点を忘れちゃいけないなって思った。そしてこの日僕は、久々に思いっきり柔道をできたんだ。
来週末20日には早慶戦がある。この6週間毎週試合が続いていて、これがそのラスト。6週間、気持ち的にも体力的にも凄くキツくて長かった。あと一週間、怪我病気の無いようにしっかりコンディションを整えて、良いフィナーレを飾れるように頑張りたい。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳