第118回:金環日食
5月21日の金環日食を、両親と地元青梅の御岳山の山頂で観察した。僕の名前はこの山から頂いたとか。昔から神様の山として崇められていて、山頂に御岳神社の神主さんたちの村落があり、参拝者を泊める宿坊がいくつかある。
僕らは前日20日にケーブルカーで登っておいて、山頂近くの宿坊に泊まった。翌朝6時に起床して山頂の御岳神社まで登る。起きた時はなかなか晴れていて、完璧な太陽が我々の目を攻撃していた。しかしいざ日食が始まってくると、段々雲行きが怪しくなってくる。予報通りあいにくの曇り空。それでも、徐々に食われて行く太陽を、雲の切れ間から、父がウキウキ買ってきたグラスを通して、たまに肉眼で、覗いた。
日食グラスを通して観た日食は、真っ暗闇の中にポツンと光の環っかが浮かんでいて、確かに面白いんだけど、何だかありきたりに見えた。プラネタリウムにいるような、写真を見ているような感覚。「 これが金環日食です !」 って教科書に載ってるやつみたいな。
それに対して、適度に雲がかかった時に肉眼で見た光景は、凄く現実的であり非現実的でもあり、不思議な世界だった。目にはもの凄~く悪いらしいけど、こっちの方が断然いい。夕方みたいにあたりが段々薄暗くなって、神社境内の思い思いの場所に佇んだ20人位の人たちがみんな空を見上げている。山の上だから、凄くシーンとしていて、時々鳥が焦ったようにピヨっているだけ。月と太陽、宇宙なんて、なかなかイメージできない世界だけど、自分が地球にいることを実感した。
自分がとても小さな存在に思えた、なんてありきたりな感想は言いたくない。ただ、もの凄いスピードで回転しているこの星に、何とかへばりついて生きている我々人間同士が、取っ組みあってブン投げ合ってる。そんなに重大に考えることはない。増してや緊張なんてする程のことじゃない。そういうこと。
今週末27日、東京学生団体、存分に戦っていきたいと思う。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳