第136回:社会不適合者
生まれてくる前から大きいベビーだった。それが順調にたくさんの栄養を取り、大きいクソガキになり、いつしか大きい慶應ボーイになっていた。大きいお陰で得したこと、そのせいで損したこと、それぞれたくさんある。きっとみんなが思っている以上にたくさんある。
服も靴も普通の店で買えるものはまずない。日本にはじゅう分首に回るネクタイもほとんどないことをご存じだろうか。学校でスキーに行くにも僕サイズのレンタル靴があるかあらかじめ確認する。なければ行けない。靴はまだしも手袋は絶対にない。病院でも旅館でもスリッパは使えない。そこらへんで服を買える体だったら、俺だってもう少しオシャレに育ってたのに、と最近は言い訳している。
それに加えて、僕は左利きだ。小学校入学時のはさみに始まり、野球グローブを買うのにもエラく苦労したのを覚えている。ある意味社会不適合者なのだ。
さて、普段から食事に関して人一倍コダワリのある私だが (・・・冗談 )、最近気に入っているスポットがある。みなとみらい赤レンガ倉庫の隣の 「 World Porters 」 にあるビュッフェ式レストランだ。具体的に言うとメキシコ料理 「 La Salsa 」 と自然食バイキング 「 はーべすと 」。
しかし、みなとみらいなんてオシャレな街。World Portersなんて、今流行りのペッタンコ男子とパリパリ女子の巣窟だ。そこにやたらイカツイ集団が、練習後の、例によってサンダルにジャージ、タンクトップ姿で嵐のように現れて、店の食糧庫に多大なダメージを与えて去ってゆく。良い迷惑だと思うよ。不適合だよね。デートとかで来てて良い雰囲気な人たちなんかには、目障りで本当に申し訳ないと思ってる。ホントだよ。
そんな私が体格でことさら目を引くことなく、スマートなフリをしていられる数少ない場が畳の上だ。ここでは普通の人間が不適合者。そんな野蛮で危険なフィールドで今度は日本一を目指す。大変なことだ。でも結局のところ、いつも通り。やるしかないのだ。
全日本学生まで、あと5日。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳