第154回:ビックリだよ
先週、あんなことを書いたばかりだったんだけど・・・。やっぱり無視できない。体罰問題が柔道界に飛び火してきた。いや、飛び火どころではない。バックドラフトだ。我々の属している世界は、一瞬にして火の海と化してしまった。
僕も一応全日本強化選手の一員である故、色んな人から 「 実際、そんなに酷かったの ?」 と聞かれる。しかし実のところ、それは全く分からない。全日本合宿で、男子と女子が一緒に練習することはないからだ。だから僕も一般の方々と同様、今はただ驚いている状況だ。いや、ごく身近である分、たぶん一般の人よりもビックリしている。
女子全日本強化でこういったことが起きていたことは、正直まぁ想像が出来なくもない。だから僕がとにかく驚いたのは、起こっていたこと自体ではなくて、トッププレーヤーたちが声を上げたということだ。幼い頃から普通の人には想像も出来ないような過酷な世界に身を置いて、血の滲むような鍛錬を積んできた人間が声を上げたのだ。それって相当なことだと思う。
旧全日本女子監督のことを僕は個人的に知らないし、訴えを出した選手たちのことも知らない。誰が出したのかも知らない。指導状況がどんなだったかも知らない以上、これは僕が口を出す問題ではない。でもそれってつまり、限られた関係者以外全てを把握している人間なんていない今の状況で、その他大勢の関係ない人たちが口を出せる問題でもないってことだ。いつものようにテレビでは連日、知ったかぶりのコメンテーターたちが色々と言っている。しかし彼らだって肝心の、どうやったら強くなれるのか、その答は知らない。確実に強くなる練習法がないように、確実に強くさせる指導法もない中で、選手も指導者も、毎日毎日もがき苦しんで、何とかしようとしている。それを分かってほしい。
どうかもう少し冷静な目で、この凄く不安定な柔道界を見守ってほしい。そうして頂けるとありがたいんだけどな。といつものように思っている。
2013/1/31
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳