第179回:サマーソニック
8月10・11日、音楽イベント 「 サマーソニック 」 が幕張メッセで開催される。その警備のバイト求人が我が柔道部に来ている。30人の大規模な求人で、僕達は部費バイトとしてこれに応じよう考えている。
部費バイトとは、部への求人に応じて部員たちが様々なバイトをして、部のカツカツな財政の助けに賃金の何割かを上納するシステムのことだ。だいたいは今回みたいなイベント警備で、九州まで出向いたりもする。時には矢沢永吉氏のようなビッグなアーティストのコンサート警備だったりもする。
具体的に警備とは、酒なんか呑んでハシャいでるお客をなだめたり、写真を撮ろうとしたり停止線を越えようとする輩を制したり、ケンカが起きれば仲裁に入ったり、なかなか厄介な人間達の対応をする。度胸と体力勝負の大変なやつで、特に夏の野外ともなると自身汗だくになりながらジッと立ってるだけでもキツい。そんな風にして必死に稼いだ金も全部は自分の物にならない。なかなか過酷なシステムだ。
4年生ともなると、自分で行きたいと言い出さない限りこれに行くことは滅多にない。実際僕は合宿や試合と重なることが多くこの3年半一度も行ったことがない。
そんな僕も今回のこのサマーソニックには少し心惹かれている。何故なら僕の好きなアーティスト・Mr.Childrenが出演するらしいからだ。ファンクラブに入ってまで頑張ってもライブのチケットが取れないあいつだ。それを部のものとはいえ多少なりとも給料までもらいながら聞けると言う話、決して悪くはない。
しかし仕事として行くぶん当然リスクもある。と言うのも、当たり前だが、希望する場所に割り振られるわけではないのだ。ステージの警備が理想だが、控室とか会場の入り口とかを任されたら、それはもう遠くの歌に耳を澄ませて立っているしかない。興味ないアーティストの歌を目の前で聞くのと同じくらい過酷なことになりかねない。
また、ある男気溢れる友達にこの話をした時に言われたことだが、
「 お前は、尊敬するアーティストに背を向けて聞けるのか ?」
これには一瞬迷ってから、「 別に構わない ( 背に腹は代えられない )」 と思ったが、確かに警備に集中することは出来ないかもしれない。
さてさていったいどうしたものか、と迷う平和な夏である。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳