第190回:ある日の日記
とある平日の深夜、大きな風呂にゆっくり浸かりたい気分で一人自転車を漕ぐ。
ちなみにこの自転車、つい何日か前にやっと買えたいわゆる自分的に 「 ちょっと良い自転車 」 だ。タイヤ29インチの特大、かつ120㎏の体重に耐えられる用にかなりヘヴィデュティ ( とはいえ100㎏以上用には作られていないらしい )。ロードバイクと言うよりマウンテンバイクに近いのかな。詳しい事は良く分からないけど、とりあえず初めて買ったこういう自転車の乗り心地に満足しながら、夜の横浜をスイスイ進む。
もう10月半ばの深夜だというのにジメジメした暑さが残っていて、ちょっとの距離でも僕なんかは汗が噴き出る。ジムの受付のお姉さんに 「 もうトレーニングしてきたんじゃないの ?」 みたいな視線を受けてソソクサと更衣室へ逃げ込む。急いで服を脱ぎ捨て風呂に直行だ。一時間半ほどかけて、いつも通りサウナから水3セットと、風呂から水2セットをこなしてから体を洗って出る。もう日付が変わっている。早く帰って寝なくては。
ジムではジムでの序列関係がある。つまり、筋肉が多い者、より重いウエイトを上げる者が偉い ( と僕は勝手に思っている )。風呂では裸だからその筋肉の差が顕著に出る。普段そのへんの銭湯で、自分より厳つい奴になんてほとんど会ったことのない僕は、ここでいつも、かつてない肩身の狭さを味わっている。しかしこの日のこの時間の風呂に本職の方々はいなかった。トレーニングにも適した時間がある。あまり夜遅くにやるのは非効率的だからだ。
帰り道、夜景がキレイで有名な公園で自転車を停め、少し黄昏れてみる。普段カップルで賑うこの公園も、12時を回ると誰もいない。自動販売機で買った最近お気に入りのジュースを飲みながら、今日一日起きた事を一つ一つ思い出して反省する。次に明日一日やることと課題を考える。こういう落ち着いて自分と向き合う時間って、意外と最近まで作れていなかったように思う。
高校時代から考えて、今置かれている環境はあまりに自由過ぎて、少し戸惑うこともある。嫌でも追い込んでくれる怖い先生や、妥協しそうになったら支えてくれる仲間も今はいない。勉強も柔道も適当にこなし、遊んで暮らすことだって出来てしまうことが怖くなったりするのだ。これからは周りの目はほとんどない。今まで以上に自分に厳しく、生活していかなくてはならない。
そろそろ目を開けているのも限界だ。念願のセミダブルベッドで、思う存分手足を伸ばす。お休みなさい。また明日も頑張ろう・・・
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳