第203回:ただ、無念だ

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平日昼過ぎ、ここ2週間ほどかけて再放送されていた 「 白い巨塔 」 を、僕は一人夢中になって観た。この作品、去年亡くなられた山崎豊子さんの小説が原作で1978年に初めてドラマ化、その後何度かリメイクされている。今回僕が観たのは、そのリメイク作の中で最も新しいやつ、2003年に放送されていたバージョンだ。財前役を唐沢寿明さん、里見役を江口洋介さんが演じているやつ。
内容を簡単に言うと、大学病院内の権力争いや、医療ミスか否かを巡った裁判のお話。ストーリー的に面白かったのはもちろんだ。しかし僕が夢中になったのは財前五郎という人間の生き方だ。外科医として確かな腕を持った上で、貪欲に上を目指し続ける姿勢、そのために手段を選ばない残酷さ、更に少し過剰ともいえる自信・・・。こんなこと言うと誤解されそうだけど、性格的に少し自分と重なる部分もあったりして、話の中でどちらかと言えば悪者として描かれている財前が、僕は大好きになったのだ。
その財前が昨日の最終回で 「 ただ、無念だ 」 と言いながら散っていくのが、もう悲しくて悲しくて、僕も心の底から無念で、しばらく一人でポロポロ泣いてしまった。日本のドラマでこんなに泣いたのは、たぶん金八先生以来のことだ。もうこの日は練習休もうかと考えたほどだった。( 気を取り直してちゃんと行きました。)

とりあえず僕は、これからまだしばらくは生き続けられるはずだから、彼みたいに無念を残すことなく生きたいものだと心底思う。死ぬことが怖いんじゃなくて ( もちろんそれも怖いけど )、心残りがあるまま去らなきゃいけなくなるのがとにかく怖い。財前がいなくなったのは寂しいけれど、今日から彼の分まで頑張っていこうと決心した。

更新:2014-01-29
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳