第210回:やれやれ

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「自分に同情するな。自分に同情するのは下劣な人間のすることだ。」
村上春樹さんの小説「ノルウェイの森」の中で、主人公と仲の良い先輩が言うセリフだ。人間って、辛いことや悲しいことに直面すると、すぐ自分で自分を悲劇の主人公にしてしまう。それって実は何も生み出さないし非生産的だ。そんな暇があったら反省して、分析して、時には真正面から戦え、そんな意味の言葉と考え、僕はこれを一つのモットーとして、いつも心の中の比較的目立つ場所に置いている。

しかし最近、自分が自分にどこか甘くなっているような気がして、若干恥ずかしい僕がいる。それはきっと、ここ数日連続して出席させてもらったいくつかの柔道部関係の送別会のせいなのだ。
こういう別れの会的なものってどうしても「あんなことがあった、こんなことがあった」の話になる。そうなるとやっぱり「あんなキツいことがあった、こんな悲しいことがあった」なんて記憶が浮かび上がってきてしまう。OBや後輩達、みんなの前で話をする時につい涙が出そうになったのは、おそらく自分に同情しているからだ。前だけ向いて、頑張る、進む、を連呼しながらも、やっぱりどこかで誰かに認めてもらいたい、褒めてもらいたい、慰めてもらいたい、小さな人間だ。先の小説に出てくるクールで超優秀な先輩のようにはなかなかなれない。まだまだ甘ちゃんのガキなんだとつくづく自覚した3月の後半であった。
「やれやれ」
久しぶりに呟きたくなった。

更新:2014-03-27
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳