第237回:勝った方が強いんです(1)
10月12日の日曜日、講道館に柔道早慶戦を見に行った。僕らの時は早稲田と慶應の道場で2年交互に開催していたのが、今年から講道館でやることになったらしい。動画配信サイトで解説付き中継放送もされていたみたいだし、いつにも増してかなり壮大なセッティング。ちなみに、ちゃんと席は全部埋まって、立ち見が周囲を囲むほどの人が入った。このへんは流石早慶。同じ会場の実業団の大会なんて、入っても7・8割の席が埋まるくらいだもん…。
今回と次回の投稿は、この早慶戦について僕が分析した色々なことをツラツラと書き綴らせて頂く。多少厳しいことも言っているとは思うけど、あくまで一OBの戯言として聞き流してくれれば良い。なおこの文章は、多少手を加えた後、慶應柔道部に「観戦記」として提出する予定だ。
始めに結果を述べておくと…大将同士一騎打ちの戦い、いわゆる「大将戦」で早稲田の主将が慶應の主将をキレイに投げて、早稲田の一人残し勝ち。20人対20人の勝ち抜き戦で、真の大将戦(副将同士が引き分けて、それぞれの大将ともに初戦、お互い体力的にも互角な条件での戦い)までもつれ込むことってなかなか無いし、第三者的にはこの上なく面白い展開だったと思う。詳細は以下の通り。
慶應 – 早稲田
渡邊△ 肩車 ◯桐生
井上 引分 桐生
白鳥△優勢勝 ◯片岡
大畠△合せ技 ◯片岡
人見 引分 片岡
安藝◯合せ技 △古川
安藝△大外刈 ◯中上
中沢 引分 中上
瀬詰◯小外刈 △中嶋
瀬詰△大外刈 ◯林
辻 引分 林
藤塚△払巻込 ◯髙橋
西村 引分 髙橋
郡司◯ 内股 △西岡
郡司◯優勢勝 △齋藤
郡司◯ 内股 △河田
郡司△送襟締 ◯蛯沢
梅田◯ 払腰 △蛯沢
梅田△優勢勝 ◯熊田
福島◯優勢勝 △熊田
福島△優勢勝 ◯吉野
菅原 引分 吉野
鎌田 引分 石井
後藤◯優勢勝 △浅賀
後藤◯袖釣込腰△井上
後藤 引分 圓山
宮本 引分 五嶋
新藤 引分 立浪
吉武△ 掬投 小林
結果:早稲田、一人残しで優勝
では僕が勝手に想像したそれぞれの作戦と展開の解説をさせてもらう。
慶應の作戦は、出来るだけ借金少なく12人目の郡司と17人目の後藤に回して、巻き返すイメージだ。理想的な展開は後藤⑰が向こうの大将まで処理すること。最悪でも後藤が早稲田の18人目を止めることが出来れば、勝利がグッと近づく。その最悪なケース(後藤が18 人目と引き分け)のために、後藤の後ろには宮本⑱と新藤⑲という堅い選手が置かれている。これで早稲田の残り二人⑲⑳をしっかりと抑え、大将・吉武は残せる計算だ。
早稲田の作戦は、慶應の作戦に対抗して、出来るだけ貯金を作って郡司と後藤を迎え、それぞれを2~3人でしっかり止めるイメージだ。前半にはある程度の実力者=貯金組を、後半には引き分けの得意な者=ストッパーをそれぞれ配置してある。最大のポイントは17人目に最も引き分けの得意な圓山を配置したこと。ここまでで何とか郡司と後藤を止めて、残りの3人で真っ向勝負することが狙いだ。
要するに、今回のオーダーを作る上で最も重要なポイントは、郡司と後藤をどこに配置するか(されるか)だ。結果から考えると、早稲田が後藤の並び順と同じ17人目に最大のストッパー圓山を配置したことはこの上ない成功と言える。仮にそのストッパーが18人目であったなら、後藤⑰は、早稲田18人目で下がることとなり、慶應の作戦通り大将・吉武を残すことが出来たはずだ。逆に15 か 16人目に配置していれば、まだ体力の残っている後藤⑰を相手に迎えることとなり、ストッパーの役目を果たせなかった可能性が高い。
結果を知った上で述べるのは恐縮だが、オーダー対決においては早稲田が一枚上手であった。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳