第238回:勝った方が強いんです(2)

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前回に引き続き、先週日曜日にあった柔道の早慶戦について、僕なりに見直す。

例えオーダーで上を行かれたとしても、メンバー個々の実力で考えれば、おそらく慶應の方が2枚くらい上手だった。それは去年の「慶應圧勝」を見てもわかる。まぁ圧勝と言えるかどうかは分からないが、僕を含め当時の4年生の力をほとんど使わずに3人残しで勝ったのだから、その差はそのまま今年に持ち越していたはずだ。それを早稲田は団結力と精神力をもって、勝負の流れの中で打ち崩した。その戦いぶりはあっぱれと言う他ない。
過去4年間は慶應の3勝と1引き分け。彼らにしてみれば、長い暗黒の時代が終わって、やっと太陽の光が差し込んだ感じだろう。その喜びや達成感は、努力してきた当事者にしか分からないものだ。決着の付いた瞬間、敗北した僕らがかろうじて見ることが出来たのは、早稲田サイドが一斉に飛び跳ねたせいで大きく波打つ畳の上で、ただ揺れながら下を向く慶應の選手たちだけだ。

勝負の世界、負けた者が次に向けて必死になる一方、どうしても勝った者は心に余裕を持つ。そして勝敗の差が大きいほど、勝者の安心も、敗者の焦りも大きくなる。どちらの大学の練習も見ていないから断言はできないけれど、おそらく去年のこの大会からの1年間、慶應が王者気取りで胡坐をかいていた間、早稲田はずっと挑戦者として努力してきたのだろう。

しかし、何度も言うが、単にその練習量の差によって総戦力がひっくり返った訳ではない。冒頭で述べたように個々の戦力を合計すれば間違いなく慶應の方が強かったはず。ただ、この挑戦者としての努力がチームの団結力を生み、当日の勢いを作った。強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ。

最後に個人的本音を言わせてもらえれば、連勝や連覇がどれほど難しいかを高校時代に嫌というほど勉強させられた僕は、去年の早慶戦祝勝会の時点で警鐘を鳴らしていたつもりだ。
「毎年そのメンバーで臨む最初で最後の大会だから伝統や過去の勝敗は関係ない。だから連覇なんて考えちゃいけない。今日の勝ちは今日のうちに忘れること。なにより大事なのは、来年チャンピオンとして早稲田を迎え撃つのではなく、またチャレンジャーとして全力でぶつかっていくこと」
しょせん結果論だけど、慶應が今回の大会に対して「前人未到の3連覇を目指して」的なことを書いたり、「まぁ大丈夫でしょう」的なことを言い合ったりしていた時に少し嫌な予感はした。負けるとしたらこういうところだろうな、と思った。

振り返ってみて、結局僕はこの部分でも組織の意識改革に失敗したことになる。残念ながら主将として投じたつもりのいくつかの石は何の波紋も刻まずに水面で跳ね返されてしまったようだ。おそらくもう何も残っていないんじゃないかと思う。また少し悲しくなった。

更新:2014-10-16
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳