第251回:とーけー

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 先週23日、ほぼ丸一日使って日吉キャンパスで発表会をしたのは、“ヘルス・データ・サイエンス”という統計手法を学ぶ授業である。この授業は、各個人で一つとグループ(6人1班)で一つ、それぞれ興味のあるテーマ(商品やサービスなど)を選び、それについて主成分分析・選好回帰分析・コンジョイント分析を使って研究し、新しい商品やサービスの提案をするというもので、この日その最終段階の研究発表が行われた。僕の今期の研究を例に、出来るだけ専門用語を使わずに、少しだけ具体的に説明してみよう。テーマは“売れる牛乳パッケージの提案”だ。

 まずは1回目のアンケートの作成。適当な手順によって考えられた10の質問を用意し、適当な手順(ラダリング)を踏んで選ばれた既存の商品12個について、それぞれ答えてもらった。一つ一つの商品に対して10個の質問だから合計12×10=120問、結構回答時間もかかる大掛かりなアンケートである。質問項目1~8は“美味しそう?”とか“太りそう?”などパッケージを見た印象を問うもの。9~10は“飲みたいか?”と“買いたいか?”の質問。これでみんなの購買意欲を掻き立てるのはどんな要素なのかうっすらと見えてくる。これが、「主成分分析」である。
次に、主成分分析で抽出された要素のうち、自分が注目する2つの有意な要素を使って商品の散布図を出す。例えばX軸に“価格の安さ”Y軸に“栄養素の豊富さ”を設定して、先の12の商品を当てはめてみる。更に消費者が欲しいと思う方向性(質問項目9・10)を数値化して原点からベクトルを引く。そのベクトル線上、あるいは付近にある商品が、選んだ2つの要素に関していえば人々に求められていることが分かる。これが、「選好回帰分析」。
次に、分析に使った12の商品を、選好回帰分析で出た“求められている商品”(たいてい1個か2個)とそれ以外に分けて眺める。すると、“求められている商品”にあって、それ以外にはない要素が浮かんでくる。例えば僕の場合だと、“商品名が青文字で縦書き”とか“産地をイメージさせる画像が入っている”とか。そんな要素を全部で7個見つける。次に、それら7要素を決められたパターンで8通りに組み合わせ、それに当てはまる商品を引っ張ってくる。例えば、一つ目は、商品名が青文字で、縦書きで、牛のマーク入り等7個の条件に当てはまる商品、二つ目は商品名が青以外の文字で、縦書きで、牛のマーク無し等7個の条件に当てはまる商品・・・のようにして8個の商品を選ぶ。

 2回目のアンケートでは、上記方法で選ばれた8個の商品を欲しい順に並べてもらう。これで、みんながパッケージのどんな要素に着目しているか、(例えば、文字の色に注目しているようだ・・・)と、その要素がどうなっていると惹かれるのか、(例えば、文字は青いのが良いようだ・・・)が浮かび上がる。これが、「コンジョイント分析」。

 次に、コンジョイント分析で明らかになった7つの理想の条件を組み込んだ架空の商品を自分でデザインする。デザインを提示して、最後3回目のアンケートで、これが本当にみんなの欲しい商品なのかを確認する。“飲みたいか?”、“買いたいか?”の質問を投げかけ、反応を見る。まあこのレベルの研究だとだいたいの人が“YES”と答えてくれてバンザーイとなる訳だ。

次回に続く・・・

更新:2015-01-31
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳