第280回:全日本実業団個人戦

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 8月29・30日、兵庫県尼崎市で全日本実業団個人戦があった。僕はこれに人生初の減量をして、−100㎏級で出場した。記念すべき−100㎏級デビュー戦である。
 この大会は、今年の講道館杯出場権を持っていない実業団選手にとって、その権利を掴むことのできる唯一の大会である。残念ながら昨年の講道館杯で失敗した僕もその一人であり、いわばこれが文字通り背水の陣であった。
 具体的には、各階級ベスト4以上の入賞者が出場権を得る。これに入らなければ、いちおう敗者復活戦もあるけれど、だいぶ厳しい戦いになる。
 結果は5回戦の準決勝で一本負けの3位。講道館杯出場権をギリギリ確保した感じだ。成績としては、もちろん優勝が目標だったから満足とは言えない。が、試合の手応えとしては悪くない。まず、初めて臨んだ−100㎏級で、減量の失敗や超級とは異なる動きに対応出来ないなど様々なリスクがあった中で、それなりに柔道を組み立てられたことに安心した。そしてなにより+100㎏級に比べてこっちの階級の方が楽しかった。
 と言うのもあくまで、試合の組み立てが至極下手くそな僕が感じていたことに過ぎないが、+100㎏級では、勝敗に占める、体重とパワーとスタミナの比重が大きい気がする。それで、前半力比べ→力が同じなら硬直状態→後半スタミナの残っていた方が競り勝つ、といった試合展開が多い。結果大きい者・力の強い者・体力のある者が勝ち上がる確率が高くなる。何しろ100㎏以上無制限なのだから体格差、筋力差は非常に大きいのだ。(ちょっと負け惜しみ)。それに比べて体重制限のある戦いでは、技術はもちろん、体造り・技の駆け引き・反応が非常に重要である。
 今回はその、腕力比べではない、気持ちや体力の勝負でもない、“柔道”っぽい“柔道”がとても楽しかったのだ。
 次の−100㎏級での試合は11月初めの講道館杯になる。いかんせんこの階級での経験が浅いまま大事な本番になるけど、この、柔道を楽しむ感覚を大切に、どんどん生まれてくる課題を乗り越えて、色んな発見をして、前進していきたい。

更新:2015-09-13
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳