第282回:小さな夢の一つ(2)

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 初めてのライブで、最も痛烈に感じたことは「やっぱ歌上手いわ!」ってこと。本当に、ほぼCD通りの声を見事に出している。一曲聞いただけで、曲作りや演奏は抜きにしてもやっぱり普通の人じゃないんだと心の底から思った。
 良くも悪くも最近の技術は進んでいて、CDでは誰だって上手に歌っているし、ライブと言いつつ堂々と口パクを披露しているグループだって少なくない。でも、やっぱりライブはリアルじゃなきゃダメだと僕は思う。本番一発真剣勝負に身一つで乗り込んでいくからこそ、その一度きりのパフォーマンスが貴重であり、成功させるための彼らの影なる努力や才能を垣間見ることが出来るのだ。
 そんなことを改めて考えながら、なかなか目の前にいる本物のミスチルに現実味を感じられないまま、ライブは進んでいった。
 好きだからこそ言うコメントとして軽く聞き流して欲しいのだが、ボーカルの桜井さんって喋りがなかなか下手くそだ。個人的には歌詞作りも上手いとは思えない。だから、曲と曲の間のMCの時は、彼が何か変なこと言っちゃったり、面白くなくて会場が静かになっちゃたりしないか若干ハラハラした。何で僕がそんな気持ちにならなきゃいけないのかはサッパリ分からないし、彼にしてみれば余計なお世話も良いところだろうけど、まぁ好きだからこその心配というところだ。ところが、いざ聞いてみるとどうだろう。なかなか上手に会場を盛り上げる。あるいは既に周到に練られた鉄板ネタを披露しただけなのかもしれないけれど、けっこう面白く聞かせてもらった。中盤、少し長いトークの場面では少し詰まりながらも、照れくさそうにしながらも、ちゃんと論理だった話をしてくれて、「桜井さんも成長したんだな」とちょっとした感動を覚えた。
 結局、およそ3時間・アンコールも含めて全27曲の歌を披露してくれた。3時間ほとんど休みなしで思いっきり歌い続けるなんて、素人の僕らからしたら不可能に近い作業だ。それを最後まで、しっかり、上手に歌い上げた桜井さんってやっぱり半端じゃないなぁと、最後のスポットライトが消えた余韻の中、改めて思った。

更新:2015-09-16
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳