第294回:旅(淡路島・香川編2)
尼崎から西へ走り、明石海峡大橋を渡って淡路島に入った。まだ日没前、夜ご飯には中途半端な時間だったが、ぼちぼち腹が減った我々はスマホで適当なご飯処を探す。“ぐるなび”に導かれるまま行った洋食屋1・2軒は昼しか営業しておらず断念。みんなマイペースでゆっくりと時間が流れている感じ、東京では味わえない不便さの中に安らぎがある。
最終的に入れたのは複合施設内にあった熟成肉のハンバーグ&ステーキを出す「听(ポンド)」という小綺麗なお店。残念ながら牛肉は淡路牛じゃなかったけれど、昔ながらの肉々しいハンバーグに淡路玉ねぎを使ったソースがたっぷり掛かっていてなかなかの美味であった。
それから我々は香川県に入る。だいたい夜10時を回り、その夜泊まる予定の健康ランド近くまで来たところで、また腹が減り始める。そこで我々はDが若い頃に通い詰めたという小さな中華料理に乗り込む。確かに、地元の中学・高校生が部活帰りに飯を一杯かき込みに集まりそうな、アットホーム感・メニュー・値段のお店である。Dの勧めるままに若干ジャンクな炒飯、ラーメン、餃子、野菜炒めなどを腹に収め、瓶ビールをみんな(運転手以外)で2本空けた。
なんせ初めての減量故、色々な加減が分かっていない。試合明けすぐに大きいハンバーグやらジャンキーな飯やらビールやらを脳の欲しがるままに胃袋に流し込んだ僕を、近年稀に見る胃もたれ&酔いが襲った。いつもの僕なら余裕で摂取していた油が腹で暴れまわり、アルコールが脳をマヒさせた。その勢いで、健康ランドのサウナに飛び込んだら、気持ち悪さが倍増して、本気で倒れそうになったほどである。
ちなみに僕は、健康ランドのカプセルホテルに泊まるのは初めての経験である。そんな慣れない環境のせいと、試合が終わった後特有の興奮が冷めないのと、どこかのアホが音を出してテレビを観ているせいで、ウトウトきたのはもう1時を回った頃。しかし、運の悪いことに、どこかのアホが観ているテレビでちょうど柔道の放送が始まってしまった。同時期にカザフスタン・アスタナで開催されていた世界選手権のテレビ放送である。今さらせっかく閉じた目を開けて、眩しいテレビを着ける気にはならないので、ボンヤリ聞こえる音だけを頼りに試合を楽しんだ。そんなこんなで、結局寝たのは2~3時だったと思う。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳