第297回:リハビリ

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 11月の講道館杯で指を骨折してから、かかりつけの病院にリハビリで通っている。だいたい週に1回、1時間半から2時間ほどのメニューをこなす。一般的な人に比べて身体を酷使する人生を送ってきた僕だが、なんだかんだ丈夫な身体のおかげで、意外にもリハビリは初めての経験である。
 もう指の可動域は戻ってるし、普通の生活を送る分には全く不自由しない。ただ怪我前の握力に戻っていない。僕にとって右手は引手。技が決まるかどうかの生命線である。練習でいい感じの技に入れても、引手がすっぽ抜けて投げきれないことが多々ある。死活問題である。
 だからリハビリと言うよりはトレーニングと言った方が近いかもしれない。メニューも普通のそれとは負荷が違う。アスリートのことも重々理解してくれている作業療法士さんの指導のもと、指まわりのみならず上腕や肩回りインナーマッスルを狙って筋トレをこなす。たまたま隣合わせになった、どこかしらに不調を抱えているおじいちゃんおばあちゃんは、そんな僕をみて 「色んなところ鍛えているけど、いったいどこを治したいんだろうか? そもそもこいつは本当に怪我をしているのだろうか?」 とかなんとか(多分)不思議そうな顔を浮かべる。そんな好奇な視線をチクチク感じながら、一人場違いなハードメニューを黙々とこなしているのである。
 とりあえず、3月の試合まではこんな感じでトレーニングを重ね、どうせなら怪我をする前以上の指を手に入れてやろうと思っている。

更新:2016-01-25
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳