第301回:新生活

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 前回の記事に書いたように、2月下旬、僕はパーク24柔道部寮に入寮した。この寮、地下に乾燥室・ウエイトトレーニング場・サウナ付きの大浴場、1階に食堂、2階に酸素カプセルや治療器具のある回復部屋と道場、3~6階が我々選手の部屋という構成。注文しておけば、栄養バランスの考えられた食事も用意される。数年前に会社が柔道部のために建ててくれた、極控えめに言っても最高の施設である。
 横浜で初めての一人暮らしを経験してから、再び寮生活に戻ってきたわけだが、やはり仲間と一緒に恵まれた施設で暮らすのは、便利で楽しいものである。またしばらくは、誰とも会話せずに一日が終わってしまう寂しさを味わうことも、何か事件に巻き込まれた時にアリバイの心配もしなくて良いのだ。

 ただ、生活環境の大きな変化に慣れるには、どうしても時間がかかるものである。例えその変化が恵まれた環境への移行だとしても。
 僕の場合、寮に入ってから、体重が落ちてきている。たまたま試合前の追い込み期で練習の負荷が重くなったこともあるけれど、一番の理由は寮の食事だ。おそらく今まで自分で用意していた食事に比べ、バランスが良くヘルシー過ぎるのだ。しばらく体重別の試合がない僕にとって体重の減り過ぎはあまりよろしくない。仕方がないから、ある夜遅く、僕の部屋にたむろしている同期に「寮に入ってから体重が減ってきちゃってるから、ラーメンでも食べに行こう」と誘ってみると「岳、そういう太り方はあかんで!」と怒られた。しかしよく見ると彼の周りには夜食として買い貯められた菓子パンがたくさん。「こいつにだけは言われたくないな…」と思いながらも夜ラーメンは諦めた。
 他にも、寮では昼寝を邪魔されることが多い。先輩や同期ならまだしも、後輩さえも平気で、「岳先輩!寝てんの ?」などと言いながらズカズカと入ってくる。そんなことを繰り返すうちに、寝る時にカギを掛け忘れるのは死活問題であることを学習した。

 そんなこんなで、この少々賑やか過ぎる寮で、仲間と一緒に思う存分競技に打ち込み、一つでも高いところへ行けるよう努力していくつもりである。

更新:2016-03-15
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳