第45回:クリスマスが近い
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11月最後の夜。俺は寮の居間で一人、テレビを見ながらご飯を食べている。今夜のおかずは、メンチカツ二枚に、山盛りキャベツとキムチ、冷奴、ゆで卵に牛乳。完璧とは言わないまでも良いメニューだ。
それにしても長かった、今月。早慶戦、勝てて良かった。中国語中間テスト、平均点を大きく上回り悪くない感触。講道館杯、世界ジュニアで完全に無くした自信を少しだけ取り戻した。東京学生二部大会、小さいところを一つずつ、確実に勝っていけた。うんうん、忙しかった今月も無事に終わりそうだ。モロッコ遠征のせいか、短い秋だった。天高く、岳肥ゆる秋・・・。そんなことをボンヤリ考えている。
すると前方から突然、キャピキャピ声で
「 先輩のことが大好きです。付き合って下さい 」 と言われる。
「 そこまで言うなら仕方ない 」 と顔を上げる。
巨大な目をしたアニメのキャラクターが俺を見ている。そう、今流行りの携帯恋愛シュミレーションゲームのCMだ。思わずため息が出る。「 こんなの、実際にやる人がいるのだろうか? 」 と自問する。「 そりゃもちろんいるのだろう 」 いつも通りの結論が出る。きっと少なくない数の人がやるのだろう。「 やれやれ、世も末だぜ 」 と、未だ彼女の一人もいない俺が偉そうに考える。
今夜のゆで卵は半熟ですごく美味い。ご飯三合と全てのおかずを平らげて、もう一度ため息をつく。
「 うん、そろそろヤベーな 」 と思う。完全に一人身のまま、肥ゆりながら、人生最大の青春イベント ( ? ) 十代最後のクリスマスが近い。 2010/11/30
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳