第148回:The Authentic English
今ゼミで卒業論文のテーマを決めなくてはいけない時期にさしかかっていて悩んでいます。テーマ選びの際に、英語教育に関する面白い資料を見つけました。ベネッセがインターネット上で公開している小学校での英語学習時間なのですが、24時間となっています。小学校での英語教育導入が始まったばかりですが、2年間で24時間ということなので単純に割ると1ヶ月に1時間程度という計算になります。1ヶ月に1時間の学習で今までとの違いが見られるのか少し疑問に思います。
英語につまずく時期で一番多いのは中学一年の後期だそうです。つまり、文法が複雑になってきたり、覚える単語の量が増えて来る頃が一番英語を嫌いになりやすい時期だと言えます。また英語を「コミュニケーションツール」ではなく「科目」として捉える頃でもあります。科目としての英語になってしまうと、どうしても絶対的に正しい文法、単語、発音があると思いがちです。実際試験では、聞かれている文法以外の語法では三角やバツがつけられてしまうことが少なくありません。例えば、授業で先生が出してくださった例に以下のものがあります。
日本語:私は昨日大阪に車で行きました。
英訳1:I went to Osaka by car yesterday.
英訳2:I drove to Osaka yesterday.
英訳してください、と言われて真っ先に思いついたのは英訳1の方でした。しかし英訳2の方が簡潔だし、自然です。自分も和訳・英訳からいまいち抜けきれないところがあることがよくわかりました。英訳1でも英訳2でも意味は同じですし、十分に通じます。どちらも問題ないのに、試験だと英訳2が△の可能性があることを考えると変だと思いませんか?この世の中に一つの絶対的な英語があるわけではありません。ましてや発音に関してはシングリッシュと呼ばれているような訛の強い英語だってあります。なのに、アメリカ英語の発音が正しいと思い、それ以外は正しくないと思ってしまう学生が多いそうです。「正しい英語」という概念に縛られてしまうのではなく、”World Englishes”と言われている世界で話されている様々な英語の一つとして日本人の英語があるということを認識できる授業になってほしいと思います。
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾