第154回:登山と下山

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こんにちは。先週、インフルエンザにかかってしまいました。急に熱が出るのは怖いですね。昨日は元気だと思っていたら、次の日には体が動かないので不便です。学級閉鎖も多いようですし、まだ流行っているので気をつけてください。

そんなインフルで苦しむある日、ワイドショーで五木寛之さんの新作『下山の思想』が取り上げられていました。本屋でもよく平積みになってポップが立っているのを見ます。その番組は、今までの日本社会が持っていた熱(私は高度経済成長期の勢いを思い浮かべました)を今の社会に求めなくてもいいのではないかと提唱していると解説していました。登山中は一つのことに向かって苦しみながらも目標に向けて登り続けています。逆に下山中は少し心に余裕を持って周りのものを俯瞰的に見渡せます。五木さんいわく山を下れば、また登るしかない。下山は登山の前のプロセスであるとのことです。日本語では「上」=向上心があっていいこと、「下」=向上心がない、もしくはネガティブだというようなイメージがあります。普段から私たちはこういった言葉のイメージを利用しながらコミュニケーションしているわけです。そのため、意識せずともこのイメージが先行して下山よりは上に向かって登っていく方がいいと思ってしまいます。だからこそ、登山でも下山でも前進していることには変わりがないというこの五木さんの考え方は私には新鮮でした。無意識のうちに登ることが前進であり、全力で前進し続けなければいけないと思い込んでいた自分がいました。

更新:2012-02-10
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾