第155回:速度を緩める
話変わって「ダウンシフターズ」をご存知ですか。別にドリフターズのようなコンビ名ではありません。減速生活者、を指す言葉だそうです。と言ってもゲンソクセイカツシャってなんぞや?という気分ですよね。社会学者の古市憲寿さんいわく、「消費社会から距離を置きながら自分たちの生活や価値観を大切にする人たち」だそうです。進む速度を緩めるということは、つまり、忙しい資本主義の生活から一歩ひく、ということです。年収は多くなくても、自分が自由につかえる時間を持つことに重きを置いています。少しずつ社会にインパクトを与えているこの新しい考え方は精神的な余裕があるという点で下山の思想に通じるものがあるといえる気がします。物質的な豊かさよりは精神的な豊かさを求める時代だということでしょうか。
もちろん中国やインドの熱気や勢いを見ていると、そんなのんびりした感情を日本人全員が抱いてしまったら日本がこの先国際勢力の中でどのような立ち位置になるのか不安にならないこともありません。むしろ全員が同じベクトルと情熱を持って突き進むくらいでないと、あっという間に新興国勢に経済的に追い抜かれてしまう気がします。特に会社説明会で世界一を狙うという会社の意気込みを聞いていると、常に全力で登山していなければ!と思ってしまいます。日本経済的には登山し続けるべきなのでしょう。でも心のどこかでは、全力で走り続けているといつか壊れるんじゃないか、という不安もあるのです。私にはまだこれからの日本社会と経済が向かうべき姿が見えずにいます。就職活動中は特にいろいろと考えてしまいますね。せっかくの機会と捉えて、社会と経済の仕組みが少しでもわかるように今日も明日もスーツで動いていこうと思います。それでは、また来週。
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾