第184回:夏の新潟

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 越後妻有の芸術祭の話を続けたいと思います。
 みどりの部屋以外にも、「LOST#6」という暗い部屋の中で鑑賞する作品がありました。床には小さな電車が走っています。電車の片面からは光が放たれており、部屋の壁にその電車から見える風景が影となって映し出されます。どんな風景かというと、線路沿いにその地域で使われている道具、例えば農道具が置かれています。その道具が小さな電車の光で影になって映ると、まるで大きな建物やオブジェ、植物の間を電車が走っているように見えます。……わかりにくいですね。残念ながら写真を撮ることができず、うまく伝えられないのがもどかしいです。その部屋で壁に映る影の景色を見ていると本当に自分がその電車に乗って旅をしているような気分になりました。ドラえもんのスモールライト(身体が小さくなる懐中電灯)で小さくなったら、こんな風に普段の道具がとても大きく見えて、部屋歩くだけで大冒険になるんだろうな。ショートフィルムを見ているような素敵なアート作品でした。
 他にも廃校となった小学校全体を使って、「もぐらの館」という作品がありました。学校自体も作品なのですが、教室にも様々な趣向が凝らしてあります。テーマは土のようで、日本各地の土の標本や土でできたアート作品がありました。一つの部屋には土で山を描いた絵がありました。土で自然風景を描くって面白いですよね。階段には大きな長い蓮があり、自分が池の下から蓮を覗いているような気分にもなりました。建物全体でも土というテーマで世界感を持っているし、個々の教室でも異なる世界感を持ち合わせていたので、各教室や廊下をまわるのがとても楽しい空間でした。
 多くの作品を巡ってきましたが、どの作品も独特の空間をつくりあげながらその土地や風景になじんでいるところが一番面白かったです。水辺の公園にはかっぱがいて(もちろん像ですが)読書をしていました。全体的にゆったりした時間を過ごすことができました。里山っていいなぁ。もっと長く滞在して他の作品を見ることができたら良かったのですが、今回は残念ながら1日だけ。また3年後に訪れるのが楽しみです。

更新:2012-09-09
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾