第192回:同じ世界の人としか(2)
『ラテに感謝!』で受けた衝撃は、実はベトナムで感じたことでもあります。滞在中、ホーチミンの街が一様に見渡せるスカイバーに行きました。そのときに、ウェルカムドリンクに始まり、洋楽のダンスミュージック、欧米や日本と変わらないカクテルを飲みながら、友人と楽しい時間を過ごしました。いる客層はおそらく外資企業に勤めているスーツ姿の白人やアジア人、もしくは観光客が多いようでした。ベトナムの道で屋台をしている人や、もしくは市場に勤めている人は来ることはないだろうと思います。この景色を見た時に、これは何もベトナム独特の光景ではなく、世界各地で同じようなバーに行けば見ることのできる光景だと感じました。国がかわっても文化がかわっても、同じ社会的地位の人たちが集まる世界があって、そこで似た価値観を共有しながら会話をするのでしょう。
アメリカ大統領選では、ロムニ―氏の度重なる失言で物議をかもしていました。生まれた時からその世界しか見ていないし、関わってきていないと、いくら全く違う世界や社会があると知っていても、その世界の常識や価値観を理解まではできないですよね。今は多様性という単語が頻繁にきかれるようになりました。企業も障害のある人や異なる人種を採用したりしています。例えば、ある外資企業では性的マイノリティーの人のための特別採用枠が設けられていると聞きました。スターバックスに人生を救われた著者も、前に勤めていた広告会社では黒人を採用しなければいけないことになり、採用はしたものの結局しっかり一社員として向き合うことはなかったと書いています。形式的なもので終わってしまったようです。自分が実際にその異なる世界にどっぷりとつかってみない限り、きっときちんと価値観を理解して共有することは無理なのでしょう。この本を読んで、ベトナムやアメリカ大統領選などで漠然と感じていたことが明確になりました。異なる価値観を理解する、というのは当然のことながら、口で言うよりも格段に難しいことです。
ちなみに、この本は決して異なる2つの世界を伝えるものではなく、スターバックスで働きはじめたことによって、著者が気づいた人生において大事なものや価値観が書かれた本です。今まで知らなかったアメリカの側面に加えて、人生訓となるものが書かれているので、どちらかに興味がある人(もちろん両方興味がある人も!)は是非読んでみてください。
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾