麻布大学
総務部 経営企画課 広報担当課長 中山浩一 氏
総務部 経営企画課 課長補佐 前田高志 氏
インタビュアー 清水信朗、江口輝亨
[清水]
麻布大学のAO入試について教えてください。
[中山課長]
AO入試と一口に言っても、アドミッションセンターなど、事務局が中心に実施するケースと教員が中心に実施するケースの2通りがあります。麻布大学は、後者のケースに該当します。また、獣医学科の場合は、1次の書類選考合格後、面接及び口頭試問が実施され、1日10人程度を5時間かけて面接し、約5日実施しています。(これを聞くと、書類選考の合格者数の予想がつきますが・・・)そして、一人の受験者を複数の試験官が面接・口頭試問しますが、これは、評価基準が変わらないよう、試験官を固定するもので、教員への負担はかなり大きくなりますが、本学の場合は、学科として求める学生を教員が自ら選ぶ、というやり方なので、本来あるべき姿のAO入試だと思っています。
AO入試と言っても、大学によって千差万別です。青田買いの唯一の手法として急速に広まった感がありますね。中にはオープンキャンパスでエントリーシートを記入させ、その場で教員と面談して、合格を出してしまうような大学まであります。このような状況の中で、仕方のない面もありますが、高校によってはAO入試を生徒に受験させないところもあります。受験者の中には、どうしても本学の獣医学科に入学したいため、AO入試の受験を希望したのに、高校から許可がどうしても得られず、御両親が高校まで直接交渉に行く場合や、時には私が高校に出向いて説明をしたこともあります。
麻布大学のAO入試は、決して楽に突破できる試験ではありません。高校の先生方にも、そこはもう少し理解をいただければと思います。高校の先生には「AO入試」を十把一絡げに考えず、きちんと個々の大学の入試制度や内容を理解した上で、判断していただきたいところです。
また、AO入試の準備をすることで、学べることは沢山あると思います。AO入試の準備を進める中で、獣医師の本来の姿を理解することで、自分には向いていないと分かるケースもあります。実は、これもとても大切なことだと思います。とにかく、一番良くないのは、大学に入学してから、こんなはずじゃなかったと思うことなのです。
[清水]
麻布大学においてAO入試、推薦入試の合格者の特徴はありますか?
[中山課長]
本学のAO入試や推薦入試の合格者は、入念に受験準備をしている方がとても多いです。例えば、空港の検疫所や役所に、仕事の内容を直接聞きに行ったりする意識の高い方もいます。結果として、本学の求める学生像どおりの人材が入学していると思います。また、本学の1次の書類選考は、積み上げ式(加点方式)で良いところを積み上げるような形で評価をしています。しかし、残念ながら不合格となった方も、何が悪いということではなく、今回は、たまたま、自分よりも評価の高い人がいた、というように理解してもらうことが、次の準備に繋がると考えています。
また、入学後は、AO入試や推薦入試で合格した学生の方が、色々な意味で伸びる傾向にあると思います。前もって大学のことや将来のことを、とことん調べて入学した学生は、やはりモチベーションの高さが全く違います。実際、AO入試や推薦入試で入学した学生は、周りの学生を引っ張っていくような存在になっている場合も見られます。AO入試や推薦入試で入学した学生の方が、どことなく、素直で飲み込みが早い印象があります。
一般入試で入学した学力の高い方でも、本学が第一志望でなかったケースや、将来やりたいことが明確になっていないケースがあり、AO入試や推薦入試で入学したモチベーションの高い学生に途中で追い抜かれるケースもあります。このことからも、偏差値で大学を選ぶことはやめてほしいです。慶應大学SFCの前学部長が、できることなら全員AO入試で採りたいと言っていた気持ちは、とても良くわかります。本質を外さずにしっかりAO入試に取り組んでいる大学は、結果的にその大学の質を上げる結果を出していると思います。
[清水]
AO入試の準備はどのようにすればよいでしょうか?
[中山課長]
AO入試を受験するのであれば、可能な限り高校1年生から2年生に準備を開始した方が有利だと思います。高校1年生から説明会等に参加される志願者は、自分の足りない部分を埋めようと努力するので、結果的にうまくいくケースが多いように感じます。例えば、自己申告書には、高校での活動に関して記入する欄がありますが、高校1年生のときに、この書類を見ている方は、積極的にクラブ活動等に参加したり、リーダーシップを発揮する努力をしています。確かに、AO入試のためだけに、活動に参加するというのは、どうかと思いますが、私はそれがきっかけで、色々なことに、積極的に取り組むことができるようになれば、将来的にとてもプラスになるのではないかと思います。AO入試を通じて、人間性の成長が期待できると思っています。
2次試験で課す講義レポートについては、テレビ番組などでもかまわないので、自分で放送された内容を取りまとめる練習をするといいと思います。また、本学で開催するオープンセミナーなどの公開授業の参加もお勧めします。公開授業に参加して、自分で授業内容を取りまとめる練習をしていれば、入試以外でも、とても役に立つと思います。講義レポートについては、特に専門知識は必要としていません。講義では、内容を分かりやすくし、何も知らない人でも理解できるように解説しています。専門用語についても講義の中で、必ず説明するように配慮しています。
また、面接・口頭試問では、このことは必ず質問するというよりは、受験者が話すことを主眼においています。とにかく、大学と受験者がお互いに理解し合うことが大きな目的です。以前、あまりの緊張で、質問に答えられない受験者に対し、答えやすい問いを挟むという意図で、「DNA」のスペルを質問したこともあるようです。
面接・口頭試問で見るポイントのひとつに、頭の回転の速さ(一定の時間に物事を処理する速さ)を見たりすることもあります。3つの言葉を提示して、「それで文章を作ってください。」といった質問をすることもありました。また、相手に自分のことをどれだけ伝えられるか、相手のことをどれだけ理解してもらえるかといった、人とのコミュニケーション能力も見ています。獣医師が対象とするものは、確かに動物ですが、会話をするのは、飼い主や生産者なので、人としっかりコミュニケーションを取ることが大事だからです。今や家族の一員である伴侶動物を診療する際には、飼い主、いわば家族へのきちんとした説明なしには治療をすることはできません。もちろん動物が大好きということは非常に大切なことです。人と話すのは苦手、でも動物なら相手ができそうという方では、獣医師の仕事をするのは難しいです。話すことのできない動物を相手にするからこそ、飼い主や生産者とのコミュニケーションが必要不可欠なのです。
[清水]
AO入試の出願書類にある模試の成績については、どのような評価をされているのですか?
[中山課長]
模試を頑張った方には、当然、プラスポイントがありますが、仮に空欄であっても、決してネガティブな評価をするわけではありません。基本的には、積み上げ方式を取っています。また、科目ごとに、バラバラの模試でもかまわないので、自分の一番成績の良いものを提出してもらえれば、それを評価します。AO入試要項では、2年生の4月からの模試結果を評価対象とすることになっていますので、1年生の頃から、このことを知っている方が、やはり有利になると思います。また、将来の国家試験のことを考慮しても、基本的にこの3教科(理科、数学、英語)の基礎学力は、最低限身に付けておいてほしいと思っています。
[清水]
AO入試と推薦入試はどう違いますか?
[中山課長]
AO入試では、口頭試問で基礎的な学力を口頭で確認する以外、学力をあまり問わないのに対し、獣医学科の推薦入試の場合は、1時間で4科目(生物I、化学I、数学I、英語I)の基礎的学力を判定するペーパーテストを課しています。これは、獣医学科に入学するために、最低限必要な科目の基礎学力を、どれだけ高校時代に身に付けているかを見ます。基礎学力があり、小論文、面接で自分の考えをしっかりと相手に伝えられることができれば大丈夫でしょう。また、本学の小論文の制限字数は、以前、60分で2,000字だったものを数年前に800字に減らしました。800字にすることで、問題意識の持ち方や表現方法についても力が必要です。2,000字のときより、さらに結果に差がつくようになりました。受験者も自分の出来、不出来を自覚しやすくなったようです。
仮に、AO入試が不合格でも、推薦入試を受験して合格する方は沢山います。とにかく“合格”を勝ち取るためには、AO入試、推薦入試、センター試験利用、一般入試とチャンスは1回でも多く生かすことをお薦めしています。
[清水]
今後AO推薦の枠を増やす予定はありますか?
[中山課長]
現段階で予定はありません。ただし、今年度から、獣医学部 動物応用科学科では、募集人数を10人から15人に増やしました。
[清水]
麻布大学のAO・推薦入試制度について、現時点で課題と考えていることはありますか?
[中山課長]
我々としては、もう少し募集人数の枠を増やしたいですね。それから、大変な準備をして出願してくれた受験者が、残念ながら不合格だった際に、一体どこが悪かったのか?と悩んでしまわないように、ある程度、結果の詳細が分かると、次に繋がると思っています。説明会等では、AO入試の倍率が高いこと、仮に不合格だったとしても、努力して準備したことは、将来必ず役立つと、我々の想いをとにかく、受験者に伝えるように努力しています。
[清水]
AO・推薦入試で入学した学生が、学力を補うための制度はありますか?
[中山課長]
AO入試・推薦入試の合格者には、入学前準備教育として課題を出して、入学までの期間、しっかり勉強してもらいます。学科によっては、入学後直ちに試験を実施して、課題の効果を測ったりします。また、自分で新聞の記事から題材を選んで、論文を書くという課題を出したこともあります。そのときは、当時の学部長が自ら採点をして、その結果を御両親あてに返送するということも行っていました。
最近、高校でも、科目によっては、入試の範囲内でも部分的に省いて教えていることがあります。その欠けている知識を埋め、苦手分野を克服することを目的に、本学では、教育推進センターを設置しています。このセンターでは、英語、数学、化学、生物の教科を、個人的にフォローする、リメディアル教育を行っています。つまり、大学に家庭教師が常駐しているみたいなものですね。
また、入学後は、全学科・学年でクラス担任制度をとっていますから、授業に関する相談などもクラス担任にすることができます。
本学では、入口と出口だけではなく、中身を重視しています。高等教育機関の本質である「人を育てる」という部分をしっかり実施することで、学生は、自然と自立するようになります。
[清水]
最後に麻布大学のことをより良く知るために、どういう方法があるかお教えください。
[中山課長]
まずは、大学のWEBサイト(リンク:https://www.azabu-u.ac.jp/)を見ていただければと思います。PCのみならず、モバイルサイト(https://www.azabu-u.ac.jp/m)も充実しています。あとは、全国各地で開催する相談会等にも、ぜひ、参加いただければと思います。さらに、意識の高い方向けに、「麻布倶楽部(リンク:https://fanclub.azabu-u.ac.jp/)」というコミュニティーを用意しています。登録した方には、受験に関する情報等をメールで素早く配信していますので、特に遠方の方などは、御活用ください。本学は、皆さんに、ありのままの「麻布大学」を知ってもらえるよう、情報は包み隠さず公開することを基本としています。大学に入学した後、「こんなはずじゃなかった。」と思うことは、お互いにとって、とても不幸なことなので、このようなことがないように、我々は、皆さんの受験前の不安をできるだけ取り除き、麻布を大好きになってから受験してもらえるように努力しています。
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