第6回:戦争と歴史

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「戦闘技術の歴史」という本を読んでいる。
人類の長い歴史の中で、「戦争がどのように行われたか」ではなく、「戦闘がどのようにしてなされていたか」
を解説している本だ。学校の授業などで、戦争の歴史を学んでも、具体的にどのような戦場で、
人間がどう戦ったのかは教えてくれない。
その点で、この本はすごく為になる。歴史を実感できる名著といえる。

現代にも、同じように戦争があって、血をともなう戦争はもちろん、経済戦争や軍備エスカレーション、宗教戦争など、あらゆる部分で闘争が展開されていると思うのだけど、「情報戦」というのも、最近では行われるようになってきた。
たとえば、「情報戦争の歴史」を紐解くと、アメリカがインターネットを普及・拡大させてから、
当のインターネットにつながれた、他国のPCから、その国の機密情報を盗み取ろうとしてきたような政策が見られる。
もちろん、実際にどうやっているのかーコンピュータをめぐるセキュリティとハッキングの議論は、いくらしても尽きないところではあるが、いずれ学校で教えるであろう歴史は、「インターネットの普及により、生活の利便性が向上した反面、世界各国で情報流出などが相次ぎ、個人の情報を守る、セキュリティという概念が重要になった」
ぐらいのものだと思う。

この歴史の中で、実際に行われている情報技術は、それはとても巧妙で熾烈なものだ。プログラムを使ったものにはとどまらない。たとえば、あるアメリカの編集者が、電話一本で、すべての銀行口座やインターネットのアカウントを盗まれてしまったという事件もある。電話一本で!

そういった、マクロな歴史を学ぶのはもちろん重要なことだが、「具体的に、誰が何を、どうやったのか」という歴史ーミクロの、実感のある歴史を学ぶことも、重要なことだと最近は感じる。

更新:2012-08-13 慶應義塾大学 環境情報学部 中園 翔