問題文
慶應義塾看護医療学部で出題される内容は、「医療の周辺」についての事柄である。たとえば障害者とか、高齢者とのコミュニケーションについてとか、震災についてとか。そのような、いわゆる「健常者の日常」からは掛け離れたものについて記された文章が出題される。その読解には、自分とは異なる他者の言葉に共感し、それを受け入れる柔軟性が必要とされるのだ。
またその文体は、ときにエッセーのような「語り口調」であることもある。そうなると感情移入をしてしまい、正確な理解ができなくなることもある。問題文を読むポイントとしては、感傷的な事例は軽く見るだけにして、著者の示す独自な「用語」や「方法論」や「抽象的な見解」に注目して文章を読み進めていく、というのが良いであろう。特に「著者の使用する独自な用語の説明」は頻出であり、それが設問で問われることも多いのである。
だからといって、慶応の看護医療の小論文で「医療知識」が求められているというわけではない。「知識」ではなく、基礎的な「読解力」や「考察力」や「文章力」が大切なのだ。小論文のみに関して言えば、問題文を読むときも、解答を作成するときも、「知識」はまったく不必要なものであるのだ。
設問
設問は毎年「問題1」と「問題2」の2題である。指定字数は100字から600字前後までである。設問の傾向としては「要約」「推論」「意見」「常識問題」のすべてが出題されており、それが「問題1」であるのか「問題2」であるのかといった規定はない。たとえば300字程度の「問題1」で「推論」と「常識」を組み合わせたような問題が出されたり、400字程度の「問題2」で「要約」と「推論」のみの問題が出されたりする。
そうなると、その見極めが困難となってくる。「問題1」を要約問題と思い本文中にその答えを探しても、答えに当たる箇所が無いこともあり得るのだ。「問題2」を意見論述問題と思い、自分の意見を述べていたら、実は本文中にヒントがあり、そこから推論すれば回答できるということもあるのだ。そのような点ではやはり、「柔軟性」が求められているのであろう。「知識」や「公式」だけではなかなか解けない問題を「小論文」で出題する意図が、そこにあるのだ。
そのような中でも「設問傾向」として言えることは、「著者の使用する独自な用語」についてであろう。その説明を設問で問われることが明らかに多いのだ。たとえば「著者の使用するAという概念の意味を説明しなさい」とか、「著者の述べるBという言葉を使用して、あなたの意見を記しなさい」というものである。
合格レベル
看護医療学部の場合、1次合格者数が2020年で249名であり、最終合格者数が151名となっている。つまり、面接と小論文の合計で上位60.6%に入れば良いのだ。これは一般的に考えれば6割でボーダーライン、7割弱で安全圏というところであろうか。「面接対策」や「小論文対策」そして1次試験を終えての「2次試験の合計点」ということを考えても、それほど「高い」ハードルではないであろう。小論文が苦手な者は大きな失敗をしないようにして、面接対策に力を入れる。小論文が得意な者は、回答の精度を高めていけばよいのである。
対策
合格レベルの答案に達するためには、まずは「要約」と「推論」と「意見論述」の違いを知ることが重要である。そして、問題文と設問文を照らし合わせて、「問題1」または「問題2」が「要約」「推論」「意見論述」のどれに当てはまるのかを判断すること。それらが出来れば「(医療系志望者として)客観的な読み」が出来るようになることと、「(設問の要求に忠実になって)精度の高い解答作成」をすることが慶応看護医療の「対策」となる。ただやはり、これらも1次試験と面接との調整のもとに最良の策を練るべきであり、その点に関して言えば「小論文のみをひたすらに解けばよい」というわけではなくなってくる。