カトリック推薦の小論文
2020年度までは完全な課題型小論文であったが、2021年度の社会福祉学科・カトリック推薦の問題のみ、文章読解型小論文という形式であった。が、2021年度の本文には「合理的無知」という語彙の説明だけが記されており、設問は「それを使って福祉政策をどうするか?」という内容のものであった。これは、形式は「文章読解型」のように見えるが、解答作成にあたっては、これも「課題型小論文」として回答すべき問題であろう。その意味では2021年度も「自由度の高い小論文」ということで過去の問題を踏襲していたのである。
ではその「自由度の高いカトリック推薦・社会福祉学科の小論文」の内容であるが、2018年は「格差社会」、2019年は「地球共生社会」、2020年は「ボランティア」について問われていた。すべて近年の社会的課題を捉えた時事的な内容である。制限時間は60分であるが、指定字数は無制限であるために、ここではそれらの「時事的な社会問題」についてあらかじめ深く考察を進めておく必要があっただろう。そうしないと、「無制限」である文字数の中で、有意義な論を広く展開できなくなるのである。
ただ、さすがに上智大学の社会福祉学科を志望するのであれば、「ボランティア」や「格差社会」については事前に考えているはずであろう。「地球共生社会」というものも「インクルーシブ」という意味の「共生社会」であり、福祉の分野の問題であった。2021年も、テーマは「貧困問題」であったのだ。それら事前の考察を、設問条件に沿った形でどれだけ組み替えられるのか、というのが入試本番では、合否を判定するポイントとなるのかもしれない。
合格レベル
2021年度の入試改革以前までは、かなり稚拙な小論文の内容であってもカトリック推薦では合格する者が多くいた。それは受験者が、カトリック高等学校の内部での選抜を通ってきたためである。カトリック系の高校で一定以上の成績を保ち、学校内での選抜をくぐり抜けてきたのである。その「高等学校の信頼」というものが付いていたために、多少の知識不足や文章力の未熟さも、看過されていたのであろう。
が、2021年度の入試改革によって高等学校内での選抜が無くなり、受験者数が増えるとなると、入学試験での差別化も行わざるを得なくなる。そうなると、「志望学科に対する知識」とや「設問条件に対応する文章力」「自分なりの意見を導く考察力」いった点で、他者よりも秀でる必要が出てくるのである。その意味で、現行の入試制度が落ち着くまでの今後数年間は「合格レベルは公募推薦と同水準」と見なした方が、無難であるし安全であろう。
カトリック推薦の対策
日本のみならず、世界における社会福祉の現状について体系的に知識を構築しておく必要がある。「体系的かつ緻密に」ではなく、「体系的かつ俯瞰的に」といった姿勢が丁度よい。それほど細かな情報が求められているのではない。世界規模での現状と、国家規模での課題と、社会規模での改善の方向性を示すことができればよいのだ。
そのためには、まずは上智大学公募推薦の小論文を時間をかけて調べつつ、解いてみるのが有効であろう。公募推薦の問題には、図表や文章が付されている場合が多く、比較的取り組みやすくなっている。それらを一通り終え、知識を蓄えてからカトリック推薦の過去問に挑んでほしい。設問条件に従い、自分の得意な分野に論を展開していけば、解答用紙の大半をレベルの高い見解と事例で埋めることができてくるのではないか。